安い!欲しい!青山ウェルカムプラザでシビックタイプRと初対面。消費者目線で細部をチェックしてみると‥‥。

499万円と、予想以上に“頑張った”価格で登場したシビックタイプR。青山ウェルカムプラザに展示されていた実車をスポーツカー好きライターの蔵田智洋が、「街乗りに使う」ことを想定して細部をチェックしてきた。
REPORT:蔵田智洋(KURATA Toshihiro)

ちょっと派手だが魅力的な内外装デザイン

フロントビューはシンプルで親しみやすいデザインでありながらスポーティな表情となった。タイプRは専用前後フェンダーが膨らみワイドトレッドとなる。

「今度のタイプRは欲しい!」新型シビックタイプRはそう思わせてくれる。優しさの中に力強さを秘めたシンプルなデザインで登場した。先代のタイプRは性能的には魅力的だったが、派手で攻撃的なエクステリアに「普段、毎日乗るには躊躇してしまう」と感じた方も多かったのではないか。

新型シビック自体、大人気だった3代目ワンダーシビックを意識した親しみやすいデザインとなっていたが、新型タイプR(FL5)は前後フェンダーを膨らませ、リヤドアもこれに合わせて新たに製作するなど、エクステリアの大部分をタイプR専用パーツで作り直すなど、かなり細部まで拘っている。「昭和のホンダ車」がSi専用のエクステリアで内外装を大幅に変えていたことを彷彿とさせる本気が伝わってくる企画だ。

フロントバンパーはシャープな空力優先の形状を取りながら、頬の部分に丸みを持たせ、柔らかな雰囲気を醸し出している。最高出力330PS、最大トルク420N・m(42.8kgf・m)を絞り出す強力なVTECターボのため、冷却性能を強化し、開口部は大きい。

バンパー、ボンネットの取り付け精度はかなり高い。ホンダエンブレムの上の形状はF-1のフロントノーズのような雰囲気がある。ラジエターの熱を上方に排出するエアフローレイアウトは控えめなデザイン。


ヘッドライト都会的なイメージで落ち着いた感じになった。バンパーとフェンダー、ボンネットとチリはピッタリと合っていて、ボンネットのエアアウトレットも控えめなデザインで前方からの質感はとても高い。

ツリ目かつ、シンプルで都会的なライトデザインとLED。ウインカーも内蔵しており、光るとこのようになる。


リヤビューは張り出した左右のフェンダーが印象的だ。3本センター出しのマフラーとディフューザーは機能優先の形状。ドアミラー、ルーフアンテナと大型リヤスポイラーはグロスブラックで塗装され、目立たないため、スマートに乗れる。

迫力のリヤフェンダーは片側45mm広げられたタイプR専用。3本センター出しのマフラーとディフューザーは機能優先の形状。大型リヤスポイラーはグロスブラック仕上げで目立たない
大型リヤスポイラーはグロスブラック仕上げで目立たない。リヤスポイラーステーの位置は絶妙でテールゲートのラインを邪魔しない。

サイドビューはポップアップフードシステム採用でギリギリまで低められたボンネット、そこから水平に伸びるキャラクターラインと美しく円弧を描くルーフラインによって伸びやかで落ち着いた佇まいだ。マットブラックで塗装されたホイール&タイヤでより一層それが強調されている。ドアプルハンドル周りに黒いボタンや鍵穴などなく、サイドウインカーはドアミラーに埋め込まれるなどの作り込みで美しさを極めている。

水平に伸びるキャラクターラインと美しく円弧を描くルーフラインが美しい。ドアアウターハンドルの位置は低く、ボタンや鍵穴などない。サイドウインカーはドアミラーに埋め込まれている。
Brembo社製フロントアルミ対向モノブロック4potキャリパー&大型ベンチレーテッドディスク2ピースディスクブレーキ(φ350mm)を標準で備える。タイヤは265/30ZR19の専用ミシュラン製パイロットスポーツ4Sを採用。

ブラックで統一したインテリアカラーも用意して欲しい!

「シビック」というイメージから乗り込もうとして驚くのは前後共ドアアウターハンドルの位置の低さだ。握った感覚もスポーティでドアを開ける重さは適切。乗り込むと予想以上の着座位置の低さに「うわー、低い!」と会場で乗り込む人たちが声をあげていた。低いボンネット、低い着座位置でスポーティ感覚にワクワクする。これこそが「昭和のホンダ」が持っていた良い意味での特別感だ。

しかし、インテリアは乗り込んだ瞬間にレッド&シルバーの加飾が派手すぎて、ちょっと・・・「ケバい」。これでは毎日乗るのに刺激が強すぎるし、「タイプR」とは本来、軽量化のために遮音材すら省略する「N1レースカーを公道で乗れる」というコンセプトであり、もっと走りにストイックな仕様なはずだ。時代の流れでナビや安全装備の充実はやむを得ないとしても派手な色調のレッドシート&カーペットの色使いとキラキラしたシルバー加飾のみというのは、あまりに偏りすぎている。

インテリアはシンプルな造形で好ましいが、シルバーの加飾と真っ赤なフロアマット、フロアカーペット、シートはかなり派手だ。ステアリングは高級素材のアルカンターラ巻き。
タイプR専用の真っ赤なバケットシートはラックススエード製で4点式シートベルトハーネス用ホールも備える。

できれば初代インテグラ タイプRがそうであったようにブラックで統一した仕様も追加で用意して欲しい。エクステリア、インテリア共にかなり良いデザインだけに、このレッド&シルバーだけで購入を躊躇してしまう人がいるのはあまりに勿体無い。アルカンターラなど高級素材ステアリングはオプションであっても良いが、普通の本革巻ステアリングが標準の方がしっくりくる。

タイプR」の魅力はハイパワーエンジンなのだから、それを際立たせるため、内外装の全ては脇役に徹するべきではないか。また電動パーキングブレーキはとても便利だが、タイプRには従来のシンプルなサイドブレーキレバーが復活してくれたらと願うモータースポーツファンは筆者だけではないはずだ。

エンジンはかなり後方に搭載され、フロントオーバーハングの絞り込みはかなり強い。インテークダクトは効率的な場所に設置されている。タイプR専用のK20C 直列4気筒DOHC 2.0l、VTECターボエンジンは圧縮比=9.8、ボア×ストローク=86.0mm×85.9mmとほぼスクエア。最高出力330PS/6500rppm、最大トルク420N・m/2600rpm-4000rpmを発生。

リヤシートに乗り込むとサイドウインドウは四角く、大きく開くので、子供でも外の景色がよく見えて快適だ。ブラックのファブリックで掛け心地、見た目共に質感も良い。やはりこれと同じ色のシートをフロントにも追加して欲しい。座ってみると目の前、フロントシートの後ろに「TYPE R」と刻印され、主張する文字に驚いた。

後席は広くて明るい。四角い窓は大きく開き、居住性は大変良い。それだけにカップホルダーを備えて4名乗車とするのは、あまりに勿体無い。レッドのシートベルトを備える。

どうしてこれを含め10箇所にも渡って「TYPE R」を主張するのか理解に苦しむ。さらに不満なのは、なぜセンターカップホルダーを埋め込み、乗車定員4名にしたのか。5人乗りできる車両でこれは意地悪にしか思えないし、実にもったいない。ラゲッジスペースは広大だ。6対4分割可倒式シートを倒せばかなりの荷物が積める。これだけの実用性を持つマニュアルのスポーツカーは今となっては非常に数少ない。

最新のスポーツモデルらしく、ACC(アダプティブクルーズコントロール)やホンダセンシングがしっかり搭載され、ナビやETCを標準装備するなど安全快適装備が充実している。高価なエアロ、バケットシート、大径ホイール、ブレンボモノブロック4potキャリパーブレーキシステム、高効率マフラーなど以前はアフターパーツで装着していたようなものが標準装備だ。初代シビックタイプRの頃にはなかった装備は、おおよそ200万円分くらいするようなものだから、それらを加味すると車両価格499万7300円はバーゲンプライスだ。

ラゲッジルームはスポーツカーとして、十分な容量がある。6対4分割可倒式シートを倒せばタイヤや工具などかなりの荷物が積めそうだ。
6MTアルミシフトノブ下のレバーはクランク状に曲げることで運転席側へと近づけられている。ドライブモードは3段階に変えられる。タイプRも電動パーキングブレーキを採用。

ホンダはF1、インディカー、モトGPと4輪でも2輪でも数々のモータースポーツで勝利し、チャンピンを獲得してきた世界トップのエンジン技術を持つメーカーだ。その技術の粋を集めたエンジンを一般公道で乗れる貴重なスポーツモデルが「シビックタイプR」だ。

ホンダが思っている以上にファンはホンダをリスペクトして購入を決めているのではないか。エクステリアはかなり魅力的な仕上げになっているだけに、インテリアの主張をブラックで抑えた「大人の仕様」があれば、筆者自身も購入対象にしたと思う。継続生産されるカタログモデルだけに、今後のさらなる改良に期待したい!

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著者プロフィール

蔵田智洋 近影

蔵田智洋

日産スカイラインGT-R(KPGC10) vs マツダロータリー勢のレース観戦をきっかけに自動車に興味を持ち、自…