33年間乗り続け4年前にレストアされたハコスカGT-Rには生き物のような魅力がある! 【100人でS20を語ろう!】

10月16日にプリンス由来の東京・村山工場跡地で開催された「100人でS20を語ろう!」には、さまざまなカスタムが施された第一世代スカイラインGT-Rが参集した。なかでも33年の間乗り続け、一時はサーキット走行まで楽しまれていた1台に迫りたい。
PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
1971年式日産スカイラインHT2000GT-R。

10月16日に日産村山工場跡地で開催された「100人でS20を語ろう!」というイベントについては過去の記事で紹介している。プリンスR380に由来する2リッター直列6気筒DOHCのS20型エンジンを搭載するハコスカ&ケンメリGT-R、それにフェアレディZ432ばかりが集まるイベントで、当日の最多台数となったのがハコスカ・ハードトップGT-R。

S20搭載車で最も販売台数が多かったということもあるが、やはりツーリングカーレースで宿敵サバンナRX-3が登場するまで無敵を誇ったのがハードトップGT-Rだから残存数も人気も多いというわけだ。まさに目移りするほど数多くのハードトップGT-Rを前に、取材すべきクルマを探すのはある意味難しい。この日はまず白いセダンGT-Rを取材して記事にしたが、そのオーナーとお話をしているときに古くからの友人として話の輪に加わってくれた方のハードトップGT-Rを紹介したい。

レストアにより新車のような状態になっている。

先の記事で紹介した白いセダンは34年間所有し続け、エンジンを自らオーバーホールしたというエピソードに大変感心したものだが、このハードトップGT-Rのオーナーである篠宮寛明さんも33年間所有しているというから驚き。お話を聞けばお二人とも同じ専門店に通っていた時期があり、その縁で今も友人付き合いが続いているそうだ。この専門店、今はすでに閉店したガレージ石坂というショップで平成初期まではGT-Rの専門店として右に出るものがないほど精通していた。

S20エンジンについても独自のオーバーホール&チューニング技術を備え、サーキット走行を楽しむお客さんが多かった。このショップへ来店したお客さんを横に乗せ、エンジン・オーバーホールの成果として試乗する機会が何度かあったというのが篠宮さんの愛車。デモカーではないが、それほど抜群の仕上がり具合だったようだ。

レースイメージのライトカバーを装着。
フロントブレーキは4ポットキャリパーに変更。
リヤブレーキはアルフィンドラムに変更。

そのためだろう、篠宮さんもエンジンの調子が良いことから何度もサーキット走行を楽しまれてきた。サーキットを走るのだからノーマルというわけにもいかず、ヘッドライトカバーを装着した姿から想像されるように適度なモディファイが加えられている。外装ではボンネット・フェンダー・トランクの各パネルが軽量なFRP製に変更され、さらに軽量化を進めるためフロント以外のガラスをアクリル製にしている。

30年前にガレージ石坂でオーバーホールしたエンジンは吸排気系を見直して、キャブレターをウエーバーに変更するとともにステンレスの等長エキゾーストマニホールド+マフラーを組み合わせてある。さらに足回りは定番ともいえるローダウンとフロント4ポットキャリパーとなるMk63ブレーキキャリパーを、リヤにはスタビライザーを追加してブレーキドラムをフェアレディZから流用するアルフィンドラムとされた。また前後に装着したオーバーフェンダーに合わせて、ワイドなRSワタナベ製マグネシウムホイールを履く。

30年前にオーバーホールされたS20型エンジン。
吸排気系を変更してポテンシャルアップを図っている。

幸いなことにノーマルのS20を積んだハコスカとガレージ石坂がオーバーホールしたS20を積むセダンGT-Rの双方を経験したことがある。両車の違いは明らかに感じられるもので、ノーマルがもっさりしているわけではないが、ガレージ石坂のエンジンはとにかくレスポンスが良く高回転まで澱みなく、かつ多少の荒ぶった振動とともに回っていく印象。

迫力がまるで違ったことを覚えている。篠宮さんのGT-Rは30年前にオーバーホールしたきりで、その後ほとんど手がかかっていないという。一度キッチリとした精度で組み直されたS20はそうそう壊れるものではないようだ。もちろん日頃の管理が十分なことはいうまでもない。強いていえば30年の間にタペット調整をしたくらいで、サーキット走行を含めて不具合は出ていないそうだ。

小径のナルディ・ステアリングにされたインテリア。
変更されたタコメーターは11,000rpmスケール!
ヒータースイッチに上に3連メーターを追加。
運転席にはサーキット走行に対応させるためニスモ製フルバケットシートを装着。

エンジンが壊れなくても年月とともにボディや内装は劣化する。こればかりはどれだけ良い環境で保管したとしても、実際に走るクルマであれば避けられない。そこで4年前にボディのレストアを実施された。そのため新車のような輝きを取り戻してあり、内装からはカーペットなどを取り去りひび割れすらないダッシュボードなどで組み直されている。少々前の記事でもハードトップGT-Rを紹介しているが、内外装ともに対照的とすらいえるもの。

前回のハードトップは純正であることとワークス由来の部品にこだわりが感じられたが、今回の篠宮さんのGT-Rからは今でも本気でサーキットを走って楽しめるようにモディファイされていることが感じられた。それはヘッドレストのない当時モノのダットサン・バケットシートではなくニスモ製のものにされていたり、室内が狭くなることを承知の上でロールケージを組んであったりする。

ステアリングも滑りにくいナルディの革巻きステアリングを選んでいることが端的な例だ。ただ、いくら調子が良くても33年もの長期間所有していて飽きないものだろうか。そう質問してみると「コイツは生き物のようなんですよ」と答えてくれた。第一世代GT-Rの魅力が、この一言に凝縮されているといえそうだ。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…