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従来のハイブリッドとは別物の「デュアルブーストハイブリッド」
新型クラウンの第一弾となるクラウンクロスオーバーには、ひとまず2種類のパワートレーンが用意される。“ハイブリッド+リヤモーターの4WD”という点はどちらにも共通するが、より手ごろで、納車開始もひと足早かったのが2.5リッター「シリーズパラレル」ハイブリッドである。
これはカムリやRAV4、ハリアー、レクサスのES300とRX、NXなど、すでに幅広く使われているトヨタの主力ユニットで、つい最近まで「THS II=トヨタハイブリッドシステムII」と呼ばれていたものだ。
そしてもうひとつが、よりパワフルな2.4リッターターボを中心に据えた新開発ハイブリッドで、少し遅れての納車開始となった。で、今回メインに試乗したのも、この「デュアルブーストハイブリッド」のクラウンである。
新しいデュアルブーストハイブリッドは、エンジンだけでなくハイブリッド部分も、従来のシリーズパラレルとは別物と言っていい。おなじみのシリーズパラレルが2つのモーターを内蔵した動力分割装置を使う(クラウンの場合はさらにリヤモーターも加わる)のに対して、新しいデュアルブーストでは2.4リッターターボは82.9ps/292Nmのモーターを内蔵した6速ATを介して前輪を駆動する。対して後輪を駆動するのは80.2ps/169Nmの水冷モーターである。
フロントモーターはエンジンを停止しての純粋な電気走行、エンジンの駆動アシスト、停止時の発電、減速時の回生充電……などの役割を担う。デュアルブーストいう呼称も、エンジンをターボチャージャーとモーターの2つ=デュアルでブーストするという意味らしい。
とはいえ、ハイブリッド部分はあくまで1モーター方式なので、モーターが発電機の役割を担っているときには駆動には回せない。よって、エンジンで発電しながらモーターで駆動する……という、いわゆるシリーズハイブリッド走行はできない仕組みだ。
もっとも、リヤにもモーターをもつ今回のクラウンであれば、フロントで発電しながらリヤで駆動すれば、構造的にはシリーズハイブリッド走行も可能ではある。しかし、担当エンジニアによると、今回のクラウンがそういうパターンで走ることはないという。
高すぎず、低すぎない絶妙なシート高
クラウンクロスオーバーに搭載されるハイブリッドのシステム出力は、2.5リッターシリーズパラレルが234ps、新しい2.4リッターデュアルブーストが349ps。実際に乗っても、後者のほうが明らかにパワフルだ。
そして、その構造から想像されるように、エンジン色が強い。そんなキャラクターを強調するように、アクセルペダルを踏み込むと“プオーン”というスポーティな乾いたエンジン音を意図的に聴かせる。とくに今回は箱根のワインディングのみでの短時間試乗だったので、なおさらパワフルなエンジンの存在感が大きかった。
大きめの地上高を確保したクロスオーバーということもあって、伝統的なセダンより見晴らしは良好なのは気持ちいい。と同時に、本格的なSUVとちがって、シートも高すぎず、身長170cm前後だと立ったまま腰を横にずらした高さにシートがある感じ。つまり乗降性もちょうどいい。新型クラウンはユーザーの若返りと国際化をねらって、今回のようなカタチとなり、最終的には4つの車型がそろえられる予定という。
とはいえ、新型クラウンのなかで、中高年ドライバーや運転手付きのショーファードリブン用途など、伝統的クラウンからの乗り替え需要が最も期待されるのも、このクロスオーバーだそうである。実際のボディ形式もあくまで4ドアセダンなので、リヤシートバックも分厚くしっかりしたつくりで、静粛性も高い。
RSには電子制御可変ダンパーを採用する
今回のリヤモーターが水冷式とされているのも、電動4WDとしてはかなり積極的にリヤを駆動する制御ゆえだ。これまで以上にリヤモーターにかかる負担が大きく、さらにパワーも高い。実際、この「E-Fourアドバンスト」は100:0〜20:80の間で、状況に応じて駆動配分する。つまり、走る通常走行時でも2割ほどはリヤを駆動し続けるということだ。対する従来型の2.5リッターシリーズパラレルと組み合わせられる「E-Four」は路面状況のいい直進時は基本的にFFで走る。
そうはいっても、やはり相対的にはフロントの駆動力が大きいFF的な走りなのは、今回のデュアルブーストハイブリッドでも変わらない。ただ、コーナーで意図的にアクセルを深く踏み込むような運転をしたときの後ろから押し出すような感覚は、シリーズパラレルのクラウンにないのは事実である。
また、クラウンのデュアルブーストハイブリッド車は、サスペンションに電子制御可変ダンパーの「NAVI・AVS」を標準装備する。同じ21タイヤを履かせたシリーズパラレルハイブリッド車(減衰力固定の通常サスペンション)と比較すると、大きくうねるような路面での乗り心地は快適だが、ロールが小さいのでステアリング反応は驚くほど俊敏だ。
つまり、可変ダンパーらしい味わいやメリットは確実にある。ただ、細かい不整などではバタつくこともあり、トータルでの快適性や運転感覚の自然さでどっちに軍配を上げるべきか……については、あらためてじっくり乗って試してみたいと思った。
トヨタ クラウン CROSSOVER RS “Advanced” 全長×全幅×全高 4930mm×1840mm×1540mm ホイールベース 2850mm 最小回転半径 5.4m 車両重量 1920kg 駆動方式 四輪駆動 サスペンション F:マクファーソンストラット式 R:マルチリンク式 タイヤ 225/45R21 エンジン種類 直列4気筒 エンジン型式 T24A-FTS 総排気量 2393cc 最高出力 200kW(272ps)/6000rpm 最大トルク 460Nm(46.9kgm)/2000-3000rpm フロントモーター種類 交流同期電動機 モーター型式 1ZM 最高出力 61kW(82.9ps) 最大トルク 292Nm(29.8kgm) リヤモーター種類 交流同期電動機 モーター型式 1YM 最高出力 59kW(80.2ps) 最大トルク 169Nm(17.2kgm) トランスミッション 6AT 燃費消費率(WLTC) 15.7km/l 価格 6,400,000円