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各国代表、個性派揃い
1983年、伝統的にニッチな商品づくりに長けたクライスラーが「ダッジ・キャラバン」を登場させる。
3列シートを備えたクルマだった。このモデルが北米で大ヒットとなる。それ以前より存在した大型のバンに形は似ていたがずっと小さかったがために、このモデルがいつしか「ミニバン」と呼ばれるようになっていく。これがミニバン誕生のあらましだ。
だが、その頃日本でも似たようなクルマが登場していた。1982年、日産は乗用車ベースの3列シート車、プレーリーを発表。1983年には三菱がほぼ同様のコンセプトのシャリオを登場させている。日本でははるかに室内スペースの広いワンボックスの人気が高かったためヒット車にはならなかったが、日本においても確かにミニバンの萌芽があったのだ。
欧州ではどうか? 驚くべきことに1984年、3列シートで7人乗りを可能としたルノー・エスパスが登場している。ヨーロピアンミニバンの元祖といっていいクルマだ。つまり、自動車大国といえる日米欧で、同じような時期に同じようなコンセプトのクルマが一斉に登場したというのは興味深い事実だ。
さて日本では、1994年に初代ホンダ・オデッセイが登場し大ヒット、空前のミニバンブームが訪れる。国産各社から、さまざまなタイプのミニバンが続々と登場した。そんな市場を外国勢が見逃すはずもなく、2000年代には、数々の輸入車ミニバンが登場している。
ところがマーケットが成熟し、国産ミニバンが一部の車種に集約していったのと同様に、輸入車ミニバンも撤退が相次ぎ、現在、カタログモデルとして名を連ねるのは、メルセデス・ベンツVクラスと、VWゴルフ・トゥーランだけとなってしまった。
輸入車ミニバンの雄、といえるのがメルセデスのVクラスだ。じつはこのモデル、ヨーロッパでの商用車「ヴィート」をベースにしている。そういう意味では欧州仕様のハイエースをベースにするトヨタ・グランエースと似た成り立ちだ。
現行Vクラスは2015年に国内導入が開始された3代目。163psの2Lディーゼルターボを搭載するFRミニバンで、全長約4.9mの標準モデルと、全長5.2m弱の「ロング」を用意する。
ホイールベースは3200mmと極めて長く、これが豊かな室内スペースを稼ぎ出す。そしてシート配列は2+2+3の7人乗りで、両側にスライドドアを装備する。
2列目には標準シートに加え、シートベンチレーターや大型オットマンなどを備える贅沢な「エクスクルーシブシート」も用意する。内外装もさすがはメルセデスという仕上がりで、フロントの巨大なスリー・ポインテッド・スターだけでも選択要因になり得る。
商用車でもアウトバーン走行が前提で、メルセデスらしい安定した走行性能は、Vクラスの特徴だ。
今も残るもう1台、VWゴルフトゥーラン
ヒット作となったアストロにも注目
ミニバンの元祖はダッジ・キャラバンだが、日本で最初に輸入車ミニバンが日の目を浴びたのはシボレー・アストロ。1990年代初頭からスタークラフト製などの派手にカスタマイズされたコンバージョンモデルが一部業者の手によって並行輸入され、カルトな人気を集めた。アストロの兄弟車、GMCサファリも同様だった。アストロは1993年からヤナセの手で正規輸入されている。
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STYLE WAGON(スタイルワゴン)2023年8月号より
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]