EVに対する欧州勢の考え方など、気になる海外の動きを知っておこう

「欧州各国の動きが素早い」桃田健史がわか〜りやすく徹底解説! #そこが知りたいEVのこと PART2 世界各国のカーボンニュートラル政策と電気自動車事情#002

ヨーロッパ、アメリカ、中国など、世界各国で進んでいるカーボンニュートラル政策。これからどうなっていくのか? 気になる疑問にお答えします。

カーボンニュートラルを高らかに宣言している欧州各国

日系に比べて、欧州各国のEV化はとにかく早かった。その大きな理由は「欧州グリーンディール政策」。その他、気になる疑問をお答えします。

Q2.テスラばかり目立つ米自動車、メーカーのEV戦略はどうなっている?

EVといえば、テスラ。そんなイメージが2010年代中盤から後半にかけてグローバルで一気に広まりました。きっかけは、モデル3の登場です。

テスラの完全オリジナルモデル第1号のモデルSとモデルXでは購入対象が富裕層でしたが、モデル3ではテスラのエントリーモデルとして幅広い年齢層が購入しています。

こうしたテスラ独り勝ちを許すまいとして、またバイデン政権による明確なEVシフト表明もあり、大手のGMとフォードもEVラインアップ強化に動き出しています。

なかでも目立つのが、シルバラードEVとフォードF150ライトニングという、フルサイズピックアップトラックのEVです。その他、ハマーやマスタングなどお馴染みの名前のEV化が進んでいます。

Q3.スピード感のある欧州勢のEV化事情はどうなの?

日系に比べて欧州メーカーのEVシフトへの転換が早い印象があります。いくつかの理由が考えられます。ひとつ目は、先に紹介した『欧州グリーンディール政策』です。

事実上の規制であるため、欧州メーカーとしては早期のEVシフトが必然なのです。ふたつ目は、現在のモデルラインアップで、日系メーカーのようにハイブリッドが主力ではないことが挙げられます。プラグインハイブリッドについては、EVシフトに向けて開発してきたものの、販売数は限定的です。

そのため、欧州メーカーはEVシフトに大きく振り出しやすい環境にあります。3つ目は、ブランド戦略です。ジャガーやボルボなど特化したブランドイメージがEVとの親和性が高いと言えるでしょう。

Q4.HV締め出しで、どうする日系メーカー?

欧州委員会は、燃費規制のEURO規制を行っています。現在はEURO6が適用されていて、次のEURO7の詳細について最終的な詰めの段階に入っています。

これに伴い、日産幹部は「EURO7に対応するため、日産は欧州市場向け内燃機関の開発を今後、行わない」と明言しています。この内燃機関とは、ガソリン車とディーゼル車を指し、内燃機関とモーターを融合するハイブリッドやプラグインハイブリッドは含まれていません。

日産としては当面、欧州市場ではハイブリッドのe-POWERを中心に戦い、2035年の新車100%EVまたは燃料電池車への下準備をすることになります。そして、プリウス筆頭にハイブリッドが主力のトヨタも、ハイブリッドで中ツナギしEVシフトに備えることになりそうです。

Q5.クルマばかりが悪いの?

カーボンニュートラルとは、地球上での二酸化炭素(CO2)の「出と入り」を机上で相殺するという考え方です。「出」には、地球上での人間の様々な活動が関係しています。つまり、クルマばかりが悪者というワケではありません。

国土交通省が2020年に示した資料によりますと、日本のCO2排出量のうち、工場など産業部門が34.7%、次いで運輸部門が18.6%、そして家庭部門が14.4%となります。

さらに、運輸部門のうち、45.9%が自家用乗用車で占められており、営業用貨物が20.4%で、航空が5.1%、鉄道が3.8%、バスは1.9%、そしてタクシーは1.1%と続きます。

こうしたデータに基づいて、EVなど乗用車の電動化がカーボンニュートラルに向けた効果が高いと指摘されているのです。

Q6.カーボンニュートラルとクルマはイコールか?

カーボンニュートラルを目指すからEVが必要。そんな話をよく耳にしますが、これらがどう関係しているのか、真剣に考える機会はあまりないかもしれません。クルマの環境問題といえば、1960年代の高度経済成長期には光化学スモッグなどが大きな社会問題になりました。

70年代以降は排気ガス規制が日本を含めてグローバルで厳しくなってきたことは広く知られていることです。ところが、カーボンニュートラルではカーボン(二酸化炭素:CO2)排出量を減らそうという考えのため、なんとなく実感が湧かないというユーザーが少なくないのではないでしょうか。カーボンニュートラルとクルマがどう関係しているのか、理解を深める必要があります。

Q7.電力確保、原発推進派のフランスの他、風力や水力をミックス?

ヨーロッパでは2020年代から2030年代に向けて、EVの数が一気に増加しそうです。そうなると心配なのが「電気は足りるのか?」ということです。

また、カーボンニュートラルは発電方法にも直接関係しますので、国や地域でどのような発電方法をとるのかも気になるところです。例えば、フランスでは原子力発電の比率が高いですが、近年は減少傾向にあります。デンマークでは風力発電が多く、またノルウェーでは水力発電が主力になっています。

こうした様々な発電方式で得られた電力を、欧州内では国際送電網を通じて売買する仕組みが一般的です。それぞれの国や地域でエネルギー事情が違うのに、全体としてひとつにまとまっているのがヨーロッパの特長です。

Q8.EVに対する欧州勢の考え方はこうだ!

欧州メーカーでいち早くEVシフトを打ち出したのは、2016年のフォルクスワーゲングループでした。正直なところ当時は、日本メーカーはもとより、同じドイツのメーカーの中にも急激なEVシフトに懐疑的な見方をする人が少なくありませんでした。

ところが、2010年代後半になり、自動車産業のみならず企業の評価を売上高など従来のやり方に加えて、環境、社会性、そして企業統治(ガバナンス)に対する企業活動が企業に対する投資の対象になっていきます。こうした社会のトレンドに対して、欧州全体でメーカーを巻き込んだ政治的な動きが強まります。

一気にEVシフトすることで欧州自動車産業を強靭にしようというもので、そのインパクトは図りしれません

PROFILE
桃田健史

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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]

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