軽BEV「サクラ」の販売が好調! 日産独自のe–POWERの今後もかなり気になる、日産のEV戦略!

リーフ、アリアに続きサクラも投入! 「やっちゃえ日産」はBEV一択なの? #そこが知りたいEVのことPART 9(3)

リーフで世界のBEV業界をけん引してきた日産。2021年にBEV「アリア」、そして2022年には軽BEV「サクラ」と相次いで新作を市場投入。一方、日産独自のe–POWERについても搭載モデルを拡充中。果たして、これからの展開はどうなる?

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BEVとe-POWERの二刀流で電動化をドンドン進行中

そもそも、日産の電動化戦略は奇抜でした。2000年代の中盤、トヨタがプリウスでハイブリッド技術を先行する中で、日産も電動化に向けたさまざまな準備を進めたのです。

後に量産化されたモデルとしては、3.5L/V6エンジン搭載の高級車「フーガ」の7速ATに1モーター2クラッチ方式のパラレルハイブリッドがあります。筆者は同車が市場導入される前に、日本のテストコースや、同車の北米モデルであるインフィニティM35ハイブリッドを当時の北米日産の近隣で試乗しました。その走り味は当時の電動車としてはダイレクト感がある大胆な加速が魅力的な、上級志向のハイブリッドシステムでした。しかし、こうした技術はリーズナブルな大衆車への転用が難しく、日産としてはハイブリッドよりもBEVを先行させるという方向に大きく舵を切ります。

リーフ登場までの間、日産がアメリカなどでBEVに関するさまざまなリサーチをした現場を取材してきましたし、リーフ量産を目指したテスト車両も全米各地で試乗し、日米の日産開発者らと意見交換をしました。

そうして、ついに量産された初代リーフは、それまでにはない完成度が極めて高いBEVだと感じたことを思い出します。

リーフとほぼ同時期に三菱「i-MiEV」も量産されていますが、これら2モデルは1800年代後半から続く自動車産業の長い歴史の中で、大手自動車メーカーが大量生産した初めてのBEVだったのです。

とくに日産は、当時のゴーン体制の下で、「グローバルでBEVの主導権を握り、各市場での競争図式を大きく塗り替える」といった鼻息の荒さがありました。

当時の日産幹部は、リーフを軸に、2ドアスポーツカー、ミニバン、インフィニティ向けなど、日産BEVの多様化計画を描いていたことは明らかです。しかし、現実はそうはなりませんでした。日産が想定したより、グローバルでのBEVシフトの速度は速くなかったからです。結果的に、唯一のリーフ派生的な存在が商用車「e-NV200」となった他、リーフで開発した一部の技術が仏ルノーで応用されるに留まりました。

また、グローバルで見ると、日産の重要市場である中国では、中国政府が推進するNEV(新エネルギー車)政策の動向を注視しながら、着実にBEV事業を拡充しています。

具体的には、中国地場メーカーの東風(トンプウ)汽車との合弁企業である東風日産として、まずはエントリーブランドであるベヌーシアでBEVを市場導入。それを追って、中国での人気車である東風日産「シルフィ」にBEVモデルを追加するなど、中国市場における適度なBEVシフトを進めている段階です。

そうした中、直近での日産の電動化戦略の基盤となるのが、2020年に公開された「ルノー日産三菱アライアンス」による、リーダーとフォロワーという考え方です。

つまり、これら3つの自動車メーカーで重複するような事業は行わず、”餅は餅屋”の精神で強みを生かすということ。

日産の強みは、技術面では、日本固有の軽自動車規格による軽BEVを含めた、中小型のBEV。そして、BEV技術を活用したe-POWERです。

また、市場別では日本はもとより、アメリカと中国でのリーダーという位置付けです。

こうした状況の中で、日産は日本でこれからどのような電動車を導入していくことになるのでしょうか?

ここからは、筆者の日産に対する取材や意見交換などを踏まえた上での推測となります。

まず、BEVについて、当面はアリアが主役となり、リーフは適度な時期に3代目に進化するのではないでしょうか。

軽BEVについては、サクラが販売好調であることから、三菱自動車との合弁事業であるNMKVが、まずは商用BEVを仕立てる可能性が高いと思います。これは、一般企業がSDGs(国連の持続可能な開発目標)を軸としたESG投資(環境・ソーシャル・ガバナンスを重視した投資)に対する意識の高まりから、日本での商用BEV需要が高まっているからです。

ホンダもNシリーズの軽BEVを近年中に市場導入することを明言していますので、日産としてはそれより一歩でも早く量産したいはずです。

さらに、軽BEVでの量産効果が高まれば、クロスオーバー系やスポーツタイプなど、在りし日にリーフ派生車として日産が描いた構想が、軽BEVで蘇ってくるかもしれません。

そしてe-POWERについては、「セレナ」に第2世代e-POWERが搭載され、先に発売されているセレナのライバルであるトヨタ「ノア/ヴォクシー」とホンダ「ステップワゴン」に対抗することになるでしょう。

著者PROFILE●桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]

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