日産のプロパイロット2.0やスバルのアイサイトXが"レベル2"、自動運転レベルの違いを知ろう!

【これからどうなる自動運転!】現在のレベルは? 自動運転の目安を表すレベル0~5とは? |第2回 自動運転へのロードマップ 後編

自動運転レベル、という表現を聞いたことがあるでしょうか。そのレベルによって自動運転の性能や法的な解釈に違いがあります。
ただ最近、自動運転レベルのあり方について考え直すべきではないかという声もあります。

あくまでも目安の自動運転レベル

自動運転レベル、というある種の基準があります。

その考え方が世界で初めて明らかになった現場に、筆者は立ち会っています。それは、2010年代の前半、アメリカの北カルフォルニアのホテルで開催された、アメリカ国防総省の自動運転に関する会合での出来事でした。

初日の朝、主催者側がいきなり「これが自動運転レベルだ」といって書類を配布したのです。

そこには、自動運転レベルについて2つの方式が示されていました。ひとつは、アメリカ運輸省道路交通安全局が示したもの。もうひとつが、アメリカ自動車技術会が示したものでした。これら双方について、ドイツの国立自動車研究所も合意しているとの内容でした。

つまり、日本抜きの欧米主導で決まったのです。

ここで問題だったのが、これら2つの自動運転レベルの区分けに違いがあったことです。

日本は最初、アメリカ自動車技術会の方法を国の方式として採用していました。ところが、2016年にアメリカ運輸省道路交通安全局の方法に一本化されてしまったので、日本でもこちらの方式に換えざるを得ませんでした。

そもそも、自動運転の議論をする際に「一定の目安がないと共通の認識ができず、話を進めにくい」という声が、欧米各国から出ていたため「まずは、自動運転レベルを作ってみよう」というスタンスで決めたものです。

そのため、一般ユーザーからすると、自動運転レベルの基準がコロコロ変わるのか、といった疑問を持つのかもしれませんが、なにせ自動運転は本格的な実用化前の創世記であるため、少々のドタバタ劇は致し方ないように思います。

現時点では、自動運転ではない一般的なクルマをレベル0(ゼロ)として、自動運転が高度になるにつれ、レベル1(ワン)、レベル2(ツー)、レベル3(スリー)、レベル4(フォー)、そしてレベル5(ファイブ)という全部で6段階としています。

現在量産化されているのは、レベル2までがほとんどで、ホンダ「レジェンド」が一定条件でレベル3となっています。

その上で、自動車メーカー各社の自動運転開発に携わる幹部などと意見交換していると、

「そろそろ自動運転レベルの考え方を改める時期ではないか?」という声をよく聞きます。

技術的、または法的な解釈のみならず、これから本格的に社会実装する時、これまでの自動運転レベルでは“つじつまが合わない”ことが増えてきそうだからです。

自動運転レベルは、あくまでも現時点での目安なのです。

レベル1

自動運転のレベルが最も低い、レベル1。国土交通省の解釈では、「縦または横の一方向だけの運転支援」としています。具体的には、衝突被害軽減ブレーキ(いわゆる自動ブレーキ)、自動での車間距離維持等を指します。つまり、アクティブ・クルーズ・コントロール(ACC)などを含むことになります。ACCで巡航中はアクセルとブレーキから足を離すことができるため、「フットフリー」と表現されることもあります。

レベル1は一応、自動運転という名前がついていますが、あくまでも運転支援であることを忘れないで欲しいと思います。

先にご紹介しましたように、自動運転レベルはアメリカとドイツが主導して一気に決まったという経緯があります。そうした自動運転レベルが導入する前から、自動ブレーキやACCは日本車を含めて量産されてきたのですから、これらをいきなり自動運転の仲間として扱うことに違和感を持つユーザーも少なくないでしょう。正確な表現をすれば、自動運転技術を活用した高度な運転支援ということです。

当然ですが、運転の責任は運転者にあり、運転者が周囲の状況をしっかり確認しながら走る必要があります。

レベル1は本格的な自動運転の入口というより、広く普及している運転支援システムだと考えてください。

レベル2

自動運転レベル2は、レベル1の「フットフリー」に加えて「ハンズフリー」が可能になります。自動で車線変更ができる、といった技術で、日産でのプロパイロット2.0やスバルのアイサイトXが該当します。レベル1では「縦・または横の一方向」としていた運転支援が、レベル2になると「縦・横方向の運転支援」になります。

こうしたレベル2を実際に体験すると「これって、相応な自動運転」といった感想を持つ人が少なくないと思います。ただし、あくまでもレベル2は運転の責任は運転者にありますので、運転者は運転中は常に周囲の状況を確認しなければなりません。

とはいっても、レベル2はどんどん高度化していて、完全な自動運転であると“勘違い”してしまうかもしれません。

実際、直近で発売されているレベル2は、どんどん高度化されていているので、数年前のレベル2に比べると数段の進化を感じます。例えば、燃料電池車のトヨタ「MIRAI」最新バージョンを都内で2022年10月に乗った際、首都高速では渋滞中から渋滞なしの走行中までほぼすべての区間においてハンズフリーで走行できてしまいました。

どうしてこうしたレベル2の技術が進化しているかといえば、レベル3に引き上げることがさまざまな点でハードルが高い、という事情があるからです。

レベル3

「レベル2とレベル3の間に大きな壁がある」。自動運転の技術開発に関わる人が以前からそんな表現を使ってきました。それは、運転の責任(または主体)が違うからです。

レベル1と2では、運転の責任は運転者にあります。つまり、普通のクルマと同じです。

一方、レベル3以上になると、運転の責任はクルマのシステムが負うという考え方になります。

つまり、レベル3以上になると、運転者は走行中に周囲の状況を常に確認する必要がなくなるのです。これを「アイズフリー」と言います。そのため、レベル3以上が本当の意味での自動運転だと思って頂ければ良いと思います。

その上で、レベル3には「一定の条件下」が付きます。この「一定の条件」とは、例えば走行する速度、高速道路上、または雨や雪が降っていない気象、といったものです。

行政用語では、この「一定の条件」を、ODD(オー・ディー・ディー:運行設計領域)と呼びます。

例えば、世界初の自動運転レベル3として量産されたホンダ「レジェンド」のホンダセンシングエリートの場合、ODDは高速道路上で渋滞時で走行速度が低いことになります。レベル3では、ODDではない条件下では、クルマのシステムが運転者に運転することを音声、表示、振動などの手段を使って要求してきます。

レベル4-5

最初に、レベル3の補足をしますと、ODD内でのレベル3では車内で動画を視聴したり、携帯電話を使用することができます。これを、運転以外の2つ目の作業という意味で「セカンダリータスク」といいます。

これがレベル4になると、クルマのシステムが運転を完全に管理するため、車内にいる人の中に運転者という考え方がなくなります。つまり「ドライバーフリー」になるのです。これを、一般的に無人運転と呼びます。

こうなると、セカンダリータスクという考えもなくなり、車内にいる人はシートベルトをするなど安全に関する配慮をした上で、基本的にはなんでもできるようになります。

だたし、レベル4でも、一定の条件であるODDがかかります。最も分かりやすいODDは、自動運転専用道路を走行するといったものでしょう。そうすることで、他のクルマからの“もらい事故”などを事前に防ぐ効果もあります。

アメリカの北カリフォルニアや中国の一部では、一般公道でODDを付けてレベル4が走行しています。日本でも2025年を目途に全国40カ所でのレベル4実現に向けた準備が進んでいるところです。

そして、ODDがまったくない、究極の自動運転であるレベル5については、その実現は事実上不可能だという考えが一般的になっています。

著者PROFILE 桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]

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