自動運転やBEVに興味があるなら知っておきたい10のキーワード_PART2[中編]

【これからどうなる自動運転】DARPA、CESっていったい何? 知っておきたいキーワード

6回にわたり自動運転の過去・現在・近未来についてレポートしてきた。最終回の今回は、前回に続き、自動運転をより深く理解するためのキーワードを解説。どうしても自動運転は、イメージ先行になりがちですが、本連載を通じて、正しい理解が深まっていければ幸いです。

KEYWORD_01 ▶ DARPA

「ダーパ」と読みます。アメリカの国防総省(ペンタゴン)が所管する、国防高等研究計画局のことです。「えっ、自動運転で国防?」と思う人は少なくないでしょう。ところが、世界で自動運転が一気に注目されたキッカケは、アメリカ軍需産業における無人移動体の研究開発にあるのです。DARPAは、NASAと同じ50年代に設立され、米ソ冷戦時代に衛星や通信などさまざまな未来技術の基礎を作ってきた国家機関です。

その中には、なんとインターネット(www:ワールドワイドウェブ)が含まれます。さらに、無人飛行機、無人小型潜水艇、人型ロボット、そして無人地上走行車の研究を考案してきました。2004年には、優勝賞金2ミリオンドル(現在の為替レートで2億7000万円)の無人カーレースをネバダ砂漠で実施。その後2005年も砂漠で、また2007年には空軍基地跡地で市街地を模したコースでのレースに発展。その上位入賞者の大学などの研究者らが現在の自動運転市販化の基礎を作ったと言えるでしょう。

KEYWORD_02 ▶ CES

「今年のCES(セス)では、こんな新商品が世界初公開されました」。毎年、日本での正月明けにアメリカのラスベガスで開催される、コンシューマ・エレクトロニクス・ショー(CES)に関連する報道があります。CESは、ITや家電の国際的な見本市です。

そんなCESが2010年代に入ってから、一気に自動車メーカーや自動車部品メーカーの出展が増えていきました。CESでのクルマ関連といえば、カーオーディオやカーナビが最先端技術でしたが、自動運転の登場によって状況は一変したのです。なかでも、ドイツのアウディはCESをグローバルマーケティングの重要イベントとして位置付け、日本を含めて世界からCESに集まるメディアやバイヤーが「今年のアウディ自動運転はどんなことで我々を驚かせてくれるのか?」といった話題になっていきました。その後、メルセデス・ベンツ、トヨタ、ヒョンデなどメーカー各社が自動運転や次世代事業戦略の発表の場としてCESを活用するようになります。

KEYWORD_03 ▶ SIP

少々長い名前ですが…、正式には「戦略的イノベーション創造プログラム」。略称が「SIP(エスアイピー)」です。内閣府が中核となり、関係省庁、民間企業、大学などの研究機関が日本の総力を尽くし、日本の未来を考える最先端技術を研究開発から社会実装に向けた道筋をつけるものです。内閣総理大臣および内閣を補佐する「知恵の場」として、総合科学技術・イノベーション会議があります。そこでの議論から、生まれたのがSIPです。平成26年度から平成30年度までの第1期では11研究課題で総額1580億円、また平成30年度から令和4年までの第2期は12の研究課題で総額1445億円の国費をつぎ込みました。自動運転に関しては、第1期から第2期まで合計9年間に渡りSIPが実施されてきました。高精度3次元地図「ダイナミックマップ」の量産化、国連の場での国際協調、世界初の自動運転レベル3をホンダ「レジェンド」で量産など、これからの日本の自動運転を支える基盤ができたといえるでしょう。

KEYWORD_04 ▶ ODD

自動運転に関わるエンジニアや学者、そして地方自治体の関係者や自動車メーカー関係者がよく使う言葉のひとつです。この「ODD(オーディーディー)」とは「オペレーショナル・デザイン・ドメイン」の略です。国土交通省では、運行設計領域と翻訳していますが、一般ユーザーにとっては「初めて聞いた」とか「で、結局なんなの?」と思われるでしょう。

簡単に言えば、走行する条件のことです。たとえば道の種類で考えると、一般公道なのか、高速道路なのか、または自動運転ではないクルマが混在しない自動運転専用エリアなのか、といった条件です。また、気象状況や路面状況では小雨なのか、豪雨なのか、積雪量が多くて路面のセンターラインや停止線などが見えない状況にある、といった条件も「ODD」に含まれます。自動運転には、自動運転レベル1〜5の5段階がありますが、特にレベル3と4で運転の主体がクルマのシステムにある場合、「ODD」は必須です。見方を変えると、「ODD」がないレベル5の実現は事実上、困難なのだと思います。

KEYWORD_05 ▶ セカンダリータスク/セカンダリーアクティビティ

ここでの「セカンダリー」とは、「第2の」という意味です。では、「第1の」は何かといえば、それは「運転すること」を意味します。つまり、セカンダリータスク/アクティビティとは、「クルマの走行中、運転すること以外に運転者が車内で行えること」になります。具体的には、飲食、スマートフォンの操作、車載器での動画視聴、さらには睡眠があります。こうした状況になるのは、自動運転レベル3の時です。

ただし、レベル3では、運転の主体がクルマのシステムなのですが、運転者はクルマのシステムが運転を続行できなくなった場合、運転者は運転をシステムから引き継がなければなりません。そうなると、運転者としては「いつ運転の引継ぎをシステムがリクエストしてくるか分からない」ため、レベル3で行える車内での行為は制限されます。実際、世界初レベル3採用のホンダ「レジェンド」ではホンダとしての自主規制として車載器動画の視聴などにセカンダリータスク/アクティビティ制限をしています。

PROFILE 桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]

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やはり、海外は日本より先に進んでいるのでしょうか。最新技術である自動運転については実際、海外は日本より高度な技術で、 しかも実用化が始まっているのでしょうか。今回はその背景をご紹介するのですが、どうも自動運転は『自動車業界の常識』が通用しない感じがします。なぜ、そんなふうに感じてしまうのか。国や地域、自動車メーカー、そしてIT系企業の動きをチェックしながら、その謎を紐解いていきましょう。

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