可変吸気システムとは可変して何をしているのか[内燃機関超基礎講座]

燃料はインジェクターが噴くから量もタイミングも自在、しかし空気は「なりゆき」だから設計がものを言う。いかに多くの空気をタイミングよく吸わせるか。その手段のひとつが可変吸気システムである。
TEXT;世良耕太(SERA Kota)

空気吸入システムの基本機能は、1)きれいな空気をシリンダー内に導くこと、2)消音すること、3)できるだけ多くの空気をシリンダー内に導くことが挙げられる。このうち、3)の「充填効率を高めること」に着目して機能を整理してみよう。まず、吸気管の曲がりを少なくすること、内面を滑らかにすることによって通気抵抗を低減する方法がある。

これを静的効果に分類すれば、動的効果もある。吸気管内の圧力変動を利用する方法で、「慣性過給効果」と「脈動効果」がある。空気は同じ速さで流れようとする(=慣性)ので、バルブが閉じた瞬間に、吸気管内の空気はそのまま流れようとし、バルブの手前は圧力の高い状態になる。そのタイミングでバルブを開くと、密度の高い空気が勢いよくシリンダー内に流れ込む。これが慣性過給効果。
一方、バルブの開閉が作り出す空気の粗密波を利用するのが脈動効果である。脈動の周期は、エンジンの回転が低いときは長く、高いときは短い。エンジンの回転数に合わせて吸気管を最適な長さに調節するのが可変吸気システムだ。

メルセデス・ベンツ6気筒エンジンのVバンク間に置いたコレクターから、吸気ポートに至る経路の途中にフラップを組み込んでいる。このフラップを開閉することで、吸気管長を「長」「短」の2段階に切り替える。連続可変ではなく、シンプルな2ステージ式の例。
吸気管の長さと断面積が一定だと、慣性・脈動効果のピークが現れ、エンジン回転数が決まってしまう。そこで、回転数に応じて長さを切り替え、充填効率が高まる領域を広げる工夫がなされる。中央左側のフラップが開いているときは、吸気管長が短くなる仕組みだ。
フラップを閉じた状態。空気が長い距離を抜けて吸気ポートにたどり着く。つまり、低回転域で使用。エンジン回転数が決められた値に達するとフラップが閉じて吸気管長が短くなる。

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