アイシン:熱をマネジメントする『冷却モジュール』で航続距離を延ばす【人とくるまのテクノロジー展2022】

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パワーマネジメントとエネルギーマネジメントに二分して電動化への取り組みを説明していたのはアイシンのブース。前者ではeAxle、回生協調ブレーキ、空力デバイスが展示されていたが、ここで注目するのは、後者のエネルギーマネージメントを担う『冷却モジュール』である。
TEXT&PHOTO:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)

2021年、カーボンニュートラルに向けた製品面での取り組みとして、モビリティ分野の電動化への取り組みを公表したアイシンは、その内容を展示会場で披露していた。アイシンの製品面における電動化への取り組みとしてはeAxleが広く知られており、今回のアイシン・ブースにおいて最も注目されていた。一方、eAxleと比較するとやや地味ではあるが、興味をそそられたのが、ここで取り上げる『冷却モジュール』である。

バルブやポンプをひとつに統合する。それが『冷却モジュール』

電動車が搭載する重要なコンポーネントの多くは冷却を必要とする。バッテリーそのため現在の車両には、複数のコンポーネントが独自に冷却用の配管・電動ウォーターポンプ・バルブ等を有している。これらを一つに統合するのがアイシンの『冷却モジュール』。図を見れば一目瞭然だが、電動ウォーターポンプやバルブが『冷却モジュール』に統合されたことで部品点数は削減され、また配管類がスッキリとしていることがわかる。これにより、軽量化、スペース効率の向上、コスト削減を実現する。

(筆者注:右図が冷却系になっていない=冷媒が循環しない構造になっているのは誤りだと思われる)

『冷却モジュール』はエネルギーをマネジメントする

軽量化・スペース効率向上、コスト削減だけでも充分に立派なのだが、『冷却モジュール』が面白いのは、エネルギーマネジメントという考え方に基づいている点である。エネルギーマネジメントとは何かと言うと、各コンポーネント同士で熱のやり取りをする、ということ。あるコンポーネントに熱が発生したとき、ちょうど熱を必要とするコンポーネントがあれば、そこに熱を供給しよう、という考え方。端的に言えば、廃熱利用である。

「例えば、冷却地のPHEVを想像してください。始動時などに、バッテリーは早くに熱を持ちますが、エンジンは熱を必要とします。この時、熱をエンジンに伝えてあげることで、エンジンの負担を減らすことができます」と説明してくれた。今は冷却されている熱エネルギーを、例えば、ヒーターに回すことができれば、エネルギーの無駄を減らすことができる。

アイシンの昨年の発表では、この『冷却システム』を含むと思われる熱マネジメントシステムの生産体制を2025年までに整備する、と記されていた。eAxleだけでなく、この廃熱利用もまた、アイシンの電動化への貢献として期待されている。

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著者プロフィール

川島礼二郎 近影

川島礼二郎

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系…