それらしきエンジンが初めてお目見えしたのは2009年6月に開催された「環境技術説明会」のこと。同会においてマツダは、2001年から2008年の間で達成した国内販売車の平均燃費30%削減実績を、今後2015年までの世界販売車においても達成するという目標を打ち出した。「デミオクラスを軽自動車レベルに、アクセラクラスをデミオレベルに」というアナウンスを当時している。
達成方法のひとつは軽量化。「次世代車体プラットフォーム」を用いることでクルマを軽くするとしていた(のちのSKYACTIV-BODYのことである)。もうひとつがパワートレインの効率向上であった。当時のレポートを引用してみよう。
もうひとつの課題であるパワートレーンの効率向上において、キーとなるのは「理想の燃焼」だ。可視化試験機による実験やコンピュータ解析を積み重ねてきたことで、新たな「制御因子」が数多く発見できたという。その結果、開発中の次世代エンジンは、ガソリンもディーゼルも着火時期の早期化、燃焼時間の短縮化による膨張率向上などを基本とした。異常燃焼が起こる要因も把握し、いくつかの条件を外すことで抑制することに成功したという。
すでにSKYACTIV技術でおなじみのキーワードがいくつか盛り込まれているが、「圧縮比」という言葉は前面に押し出されていない。正直、当時のメディアの取り上げ方としては通常ニュース以外の何物でもなく、一部の識者のみが「マツダが何やらおもしろいことを始めた」と気づいていた程度だった。
マツダはこの先進技術説明会で、試作エンジンを発表。「次世代ガソリンエンジン」「次世代ディーゼルエンジン」という、まことに味気ない(そして記憶に残らない)呼称であった。
翌2010年版の『マツダ技報』では「次世代パワートレイン開発コンセプト『マツダSKYコンセプト』」としてSKYACTIV前段となるキーワードが登場。ここにおいても印象的な「圧縮比14」という数値は示されていなかった。これに関しては機会をあらためて解説してみよう。