なぜ止める? フォルクスワーゲンの気筒休止「ACT」の仕組みと効能[内燃機関超基礎講座]

1.4 TSI(EA211)の高機能版に載せられているフォルクスワーゲンの気筒休止システム:ACT。どのように運転と休止を使い分け、作動させているのか。
TEXT:世良耕太(SERA Kota)

アクティブ・シリンダー・マネージメント(ACT)は燃費向上技術のひとつで、103kW仕様の1.4TSIと組み合わせられる。2011年のフランクフルトショー(IAA)などで技術の紹介はあったが、エンジンに実装されるのはEA211が初めて。内燃機関のみのバリエーション中トップエンドの仕様となる。

2番、3番気筒のカムシャフトにはそれぞれ、Y字形の溝が刻んである。電磁アクチュエーターが作動するとオン/オフスイッチの役割を果たすピンが出てきて溝にはまり、回転にともなってカムをスライドさせ、ゼロリフト状態にする。アクチュエーターなど、ACTを機能させるのに必要なコンポーネントの重量は3kg。
赤が作動気筒/緑が休止気筒。上のイラストと逆なので注意。

ACTはエンジン回転数が1250~4000rpmの範囲にあり、なおかつ発生するトルクが25~100Nmの低中負荷域で作動。2番および3番シリンダーをシャットアウト(吸排気バルブが閉じたままの状態を保つ)し、2気筒で運転する。これによりEUドライビングサイクルで0.4ℓ/100kmの燃費向上に寄与するという。

各ギヤ段と速度別の燃費向上効果をまとめたもの。回転域が低くかつ負荷が低いほど、2気筒シャットダウンの効果が大きいことがわかる。
2気筒シャットダウンの効果を示したグラフ。低中回転域で2気筒をシャットダウンし、残りの2気筒だけで運転すると、気筒あたりの負荷は高くなり、燃費率の高いゾーンでの運転が可能になる。燃費の目玉を積極的に使おうとするのがACTの基本コンセプト。
彩色してあるエリアがACTの作動領域。ギヤ段は6速まで記されているので、MTでのケース。一般的な走行の70%をACTが作動した状態でカバーするとVWは説明。気筒休止からの復帰に要する時間はクランクシャフト1.5回転分。ラウンドアバウト通過時や高速道路流入時などで素早いシフトチェンジを行なうようなシーンでは機能をキャンセルする。

3速もしくは4速ギヤを選択して50km/hをコンスタントに走行した場合は1ℓ/100kmの燃費向上効果、5速70km/hで定常走行した場合は0.7ℓ/100kmの効果があると説明する。ACTのアクチュエーターを載せたシリンダーヘッドはモジュール構造による設計。

バルブトレーンを組み込んだカムカバーもモジュール化。ヘッドへの取り付け点を標準化している。すべてのEA211は吸気側に可変バルブタイミング機構を装備。高出力版の103kW仕様は排気側にもVVTを備える。直噴システムの最大噴射圧は200bar。

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…