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A25A-FXSの特筆点は、低燃費と高応答性。
低燃費の達成数値という視点からは、最大熱効率41%を掲げている。発表会でうかがったエンジニア氏によれば、ピンポイントでの達成ではなく広く深くの燃費率を確保した結果としての41%だという。実際、燃費率マップを眺めても高効率エリアが広いのが見て取れる。
高い熱効率(低燃費)に寄与したひとつが、高圧縮比化。ハイブリッド仕様では14の、ガソリン仕様では13の数字を実現した。高圧縮比化設計とすると、ガソリンエンジンではノッキングに苦しめられる。対策は、急速燃焼。つまり、未燃焼部分で勝手に着火してしまうより速く、燃えてしまえばいいというわけだ。その手段が、ロングストローク設計と高タンブルポート設計、そして直噴である。
ロングストローク設計
同じ行程容積なら、大径より小径のほうが速く着火できる。A25A型エンジンは、先代の2AR型の90mmボアに対して87.7mmと縮小。排気量はほぼ同等の2.5ℓ同士なので、勢い行程/内径比は2AR型の1.09に対してA25A型は1.18と大きくなった。
また、ロングストローク化は(相対的に)小さな燃焼室構造となり、燃焼室表面積/行程容積であるS/V比が小さくなることで冷却損失の低減にも寄与している。
高タンブルポート設計
吸気ポートが燃焼室に向かってストレートな形状になっているのが見て取れる。実現のために用いたのがレーザクラッドバルブシート。焼結合金をバルブシートとして嵌める従来法では、嵌め合い部の寸法確保のために鉛直方向のスペースが必要。すると、どうしてもスロート部に屈曲点が生じてしまう。レーザクラッドバルブシート工法は、シート素材となる金属粉末を吹き付けレーザで焼き固める方法で、先述の寸法が詰められるのが美点。結果、A25A型の吸気ポートは燃焼室に向かって切り込むような形状を実現し、流入ガスの勢いを殺さずに筒内に導入、つまり高タンブル流を確保している。
バルブ挟み角の拡大を発表しているが、これは高タンブルのためのポートの角度を設定した結果、吸気バルブの角度が大きくなったと考えるのが順当だろう。通常、小さな燃焼室設計を目指すのに、バルブ挟み角は縮小することが多いためだ。
筒内燃料直接噴射
直噴は、高圧縮比化への寄与が大きいことがよく知られている。圧縮行程において高温高圧となる混合気に対して、火を着ける直前に燃料を噴けることでそもそもノッキングの発生を抑えられること、噴射後だとしても温度の低い燃料を噴くことで蒸散作用によって混合気の温度を著しく下げられることなどが理由である。
他方、直噴式はどうしても空気と燃料がよく混ざらないということに加え、燃料液滴がボア壁面やピストン冠面に付着してしまい、粒子状物質を生み出してしまう欠点がある。それを防ぐための手段が先述の高タンブル流設計、そしてインジェクタの噴射方向のチューニングである。また、A25A型はポート噴射も併用していることから、良質な混合気を醸成することにも長けている。余談ながら、直噴用の燃料ポンプが大層な鋳物に囲まれて設置されていたのを発見、これは衝突時対策だという。
排気側の工夫も多い。排気マニフォールドはご覧のように後方へ伸びた格好で、等長と4-2-1構造を実現。排気干渉を最小限に抑えることで排出ガスの流出エネルギーを殺さず、筒内の掃気効率を高められる技術だ。
触媒後から分流するのはEGR管で、こちらも高圧縮比化に寄与。A25A型はシリンダーヘッド内にガスを流してまず冷却、そしてさらに液冷式EGRで温度を下げ、筒内に導入する。不活性ガスを混合気に含めることでノッキングを抑えられるのはディーゼルエンジンと同様の効果、ガソリンエンジンにおいてはEGR管が結果として連通路の役割を果たし、ポンピングロスを抑えられるのが効果として大きい。最大導入率は25%とのこと。
いずれにせよ、これだけの場所を取る排気システムを収めるためには、車体側の協力が不可欠。TNGAでエンジン搭載位置とバルクヘッドの位置関係を新たに固定設定できたことが、採用できた理由だろう。事実、チーフエンジニアはカムリについて「フルTNGA」という表現をしていた。なるほどである。