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NEDOは、同発電所内でCO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)など次世代火力発電の実証研究を実施している。今回の取り組みでは、同発電所の排気ガスから分離・回収したCO2を利用し、化学品や燃料、鉱物を製造するカーボンリサイクル技術の開発を行う。さまざまなカーボンリサイクル技術の研究開発を効率的かつ集中的に進められる環境を整え、技術開発を促進することで、技術の早期実用化が目指される。
概要
CO2を資源として有効活用するカーボンリサイクル技術は、2021年6月に経済産業省などが策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略※1」において、カーボンニュートラル社会を実現するためのキーテクノロジーとして位置付けられた。また、2021年7月に改訂された「カーボンリサイクル技術ロードマップ※2」においても、同技術の確立に向けた技術開発をさらに加速することが記された。加えて2019年9月に開催されたカーボンリサイクル産学官国際会議では、経済産業省によりカーボンリサイクル3Cイニシアティブが提唱され、CO2の分離・回収が行われている場所でのカーボンリサイクル実証研究拠点の整備を通じ、研究開発や実証研究を集中的に進めることが重要とされた。
これらの動向を踏まえ、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、大崎クールジェンとCO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)※3やCO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)※4など次世代火力発電の実証研究を行ってきた、中国電力株式会社大崎発電所内(広島県大崎上島町)にて、2020年8月よりカーボンリサイクル技術の実証研究拠点の整備※5に着手した。本実証研究拠点は実証研究エリア、基礎研究エリア、藻類研究エリア※6の三つからなる。実証研究エリア、藻類研究エリアではすでに拠点の運営や研究活動を開始してきたが、このたび基礎研究エリアの整備が進んだことから、カーボンリサイクル技術の基礎研究や先導研究の6テーマが採択された。
事業の内容
事業名: カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2有効利用拠点における技術開発
事業期間: 2022年度~2024年度
事業総額: 約25億円(予定)
実施内容: 本事業ではCO2有効利用拠点における要素技術開発などが行われ、さまざまなCO2有効利用技術を対象に経済性やCO2削減効果などが評価される。基礎研究エリアでは、CO2を有効利用した化学品や燃料、鉱物を製造するため、以下6件の研究開発に取り組む。
3.採択テーマと委託予定先
■ダイヤモンド電極を用いた石炭火力排ガス中CO2からの基幹物質製造
慶應義塾、東京理科大学、石炭フロンティア機構
■大気圧プラズマを利用する新規CO2分解・還元プロセスの研究開発
東海国立大学、川田工業
■CO2の高効率利用が可能な藻類バイオマス生産と利用技術の開発
日本製鉄
■CO2を炭素源とした産廃由来炭化ケイ素合成
東北大学
■カーボンリサイクルLPG製造技術とプロセスの研究開発
ENEOSグローブ、日本製鉄、富山大学
■微細藻類によるCO2固定化と有用化学品生産に関する研究開発
アルガルバイオ、関西電力
※1 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を、経済と環境の好循環につなげるための産業政策として、2021年6月18日に経済産業省が関係省庁と連携して「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定された。
※2 カーボンリサイクル技術ロードマップ
※3 CO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC) IGCCはIntegrated Coal Gasification Combined Cycleの略。石炭をガス化して、ガスタービンと蒸気タービンの2種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行う発電方式のこと。
※4 CO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC) IGFCはIntegrated Coal Gasification Fuel Cell Combined Cycleの略。石炭をガス化して、燃料電池、ガスタービン、蒸気タービンの3種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行う発電方式のこと。
※5 カーボンリサイクル技術の実証研究拠点の整備
※6 藻類研究エリア