従来は天然由来の膜を使用していたが、この人工膜を利用した新手法により、不純物を含まない環境で、より精度の高い評価が可能になった。今回の発明により、今後新たな重要成分の発見を通して、天然ゴムの収率改善や、人工的な生合成などにつながることが期待される。
パラゴムノキでの天然ゴム生合成(超高分子量イソプレン鎖の生合成)においては「Hevea rubber transferase 1 (HRT1)」「HRT1-REF bridging protein (HRBP)※1」「Rubber elongation factor (REF)※2」と呼ばれる3つのタンパク質が重要であることがわかっていたが、複数の分子結合を行う酵素と考えられる「HRT1」がどのような条件で機能を発揮するかは解明されていなかった。
「HRT1」はこれまで、ゴム粒子膜や酵母膜など天然由来の膜上でイソプレン鎖を生合成することは確認できていた。しかしながら、天然由来の膜を使用するため不純物の混入が課題となっていた。そこで、天然由来の材料を使わない人工膜(ナノディスク)を利用した酵素評価方法の開発を行ってきた。
このたび、「HRT1」を「HRBP」と一緒に人工膜上に載せると、「HRT1」がイソプレン鎖を生合成することが発見された。これは人工膜上で「HRT1」の機能を発揮させた世界で初めての事例。
なお、本研究成果は、生命科学分野の国際誌である「Scientific Reports」に掲載されている。
※1 「HRT1」と天然ゴムの蓄積場である膜粒子との結合を補助すると考えられるタンパク質
※2 膜の粒子の安定性に関わると考えられるタンパク質