ピストンとコンロッドの構造を詳細に眺めてみる[内燃機関超基礎講座]

ピストンとコンロッドは、燃焼(化学反応)により発生した上下方向の力(運動エネルギー)を、クランクシャフトへ回転運動に変換して伝える部品である。

ピストンは燃焼ガスを直接受けるため、頂部では300°C、下部では140°C近傍と温度勾配が’非常に大きい。圧力と熱負荷を受ける上に、高速の往復運動を繰り返すため、慣性力の影響が非常に大きく、可能な限り軽く作る必要がある。冷却は吸気と燃料もある程度寄与するが、専らオイル冷却に頼っている。クランクケースからの飛沫だけでは足りないので、上部の内側にクーリングチャンネルを設け、オイルでピストンの上部の冷却を行なう。鋳造であれば中子で作れるこの孔も、鍛造では一体では作れないので、上部と下部を別に作ってレーザー溶接する。

材料は熱処理したアルミ合金製がほとんどだが、高い燃焼圧力にさらされるディーゼルエンジンでは鉄素材のものもある。ピストンピンの中心から冠面基準部までの高さをコンプレッションハイト(ピンハイト)と呼び、性能上の指標となる。高回転エンジンほど小さく、DEでは逆に大きくなる傾向にある。ピンより下側の側面はスカート部で、ピストンの首振りに対応して姿勢を安定させる役目を担う。2ストロークエンジンでは全周のものもあるが、大体は首振りを受けるピンの直角方向だけに配される。スカートはピストンの重量に直接跳ね返るので、レーシングエンジンでは極力小さくする傾向にある。

スチール製ピストンの例。大径のピン穴と最小限のスカート構造が特徴的。(PHOTO:MAHLE)

上死点付近でコンロッドの傾きが一気に逆になることに起因するピストンスラップも首振りの一種で、エンジン騒音の主因となるため、スカート表面の処理(コーティング等)で対応する。ピン中心をピストン中心からオフセットする手法もある。冷却してもピストン全体の温度勾配は存在し、スカート方向は質量と表面積が大きいため(熱容量大)熱が逃げてくれるが、ピン方向には熱が溜まりやすく、それによって円周方向に温度差からくる膨張率の違いが出る。一見真円に見えるピストンだが、運転時に真円になるよう、膨張率差を考慮してスカート方向よりピン方向の径を若干小さく設計する。

ピストンピンには非常に大きな力がかかる。例えばボア径85mmのエンジンで最大ガス圧力が55kgf/cm²の場合、ピンには3120kgfもの力がかかる。従ってピン径はなるべく太くしたいところだが、重量とコンロッド小端部の寸法的制約があるので、強度とのバランスが求められる。ピン穴への固定方法は、両端をスナップリングで固定するフルフローティング式と、コンロッドブッシュに圧入する方式があり、現在ではほとんどがフルフローティング式である。

コンロッドには、大小端円周には引っ張り、大端肩部には引っ張りと曲げ、棹部には引っ張りと圧縮、さらに捻りという複雑な応力がかかる。そのため小端と大端をつなぐ棹部は両端を左右二本でつなぐのが理想だが、ビッグボアでないとシリンダー下部に当たってしまうため、通常は一本で支える。一般的なのは上から見た断面がI形状のもの。ただし金型による鍛造が必須となるため、切削加工が可能なH断面のものもあるが、形状としては理想的ではない。

大端部には排気→吸気行程の上死点で慣性によって大端部が引っ張られるクローズインという現象が起き、焼き付きの原因となる。大端下部(キャップ部)と棹部の剛性が影響すると同時に、分割された大端部を締結するボルトの材質・締結方法が重要となる。コンロッドボルトの締結は、トルク管理、角度管理の他に、ボルトを弾性域内で締めるか、塑性域まで締めるか、メーカーや用途によって様々なノウハウがある。材料はクロームモリブデン鋼が多い。一部にはアルミ合金鍛造やチタン合金、焼結素材も見受けられる。

棹部の長さはそのまま運転中のコンロッドの傾きに現れる。棹部が短いと傾きが大きくなり、ピストンスラップとフリクション増大を招く。回転数が高いほどその影響が多いため、高回転エンジンほどストローク長に対するコンロッド長が大きい。両者の比率を連棹比と呼び、エンジン性能のひとつの指標になっている。

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