永久磁石を使わない巻線界磁式モーター、これまでの駆動用モーターと何が違うのか

日産の次世代EV・アリアに巻線界磁式と呼ばれる新たな形態の同期モーターが採用される。いっぽうノートe-POWERでは従来の磁石界磁型を発展させたEM47型も投入されており、これらのモーターは今後しばらくの間は併用されていくことになりそうだ。

TEXT:髙橋一平(Ippey TAKAHASHI)

モーターファン・イラストレーテッド vol.178「よくわかるバッテリー」より一部転載

「モーターの力でタイヤを駆動してクルマを走らせるという意味では、EVでもシリーズハイブリッドのe-POWERであっても、とくに違いはありません。モーターに求められる性能としてはまったく一緒、同じです」

 ノートの第二世代e-POWERとともに登場したEM47型に続き、まもなく発売されるアリアには巻線界磁式と呼ばれる新たな形態の同期モーターが採用される。先述のEM47型は従来通りの永久磁石界磁式同期モーターであり、日産の電動車向け駆動モーターはふたつの形態が併用されるかたちとなる。これらは今後どのように使い分けられていくのだろうか。この疑問に対し日産のパワートレイン・EV電動技術部開発部・部長の大木俊治氏は冒頭のように、きっぱりと前置きしたうえで丁寧に話し始めた。

「ただし、巻線界磁式はローターのコイルに給電するためのブラシ機構のスペースが必要で、そのぶん軸方向に長くなります。e-POWERではエンジン、ジェネレーター、そしてモーターをエンジンコンパートメントにギュッと凝縮して納めなくてはならないため、巻線界磁式モーターではなくコンパクトなEM47型を選択しています。性能ではなくレイアウト上の制約という要素が大きいところです」(大木氏)

 アリアの巻線界磁式モーターは、日産がルノーの協力を得ながら開発したもので、もともとルノーZOEに搭載されるモーターの技術をベースとしている。

ルノー・ゾエの電動パワートレーン

「ZOEのローターのコイル(電磁石)は4極ですが、アリアでは倍の8極に増やしました。これにより電気角も2倍になり、電圧をより有効に使えるようになっています。界磁用コイルには直流の電流をブラシで給電するために、あまり大きな電流は流せませんので、コイルの巻き数で(磁力を)稼ぐかたちです。一般に巻き数を増やすとインダクタンス(コイルに電流が流れ始めるときに抵抗として働く力)が大きくなりますが、ここは制御を工夫することで応答性への影響をうまく回避しています。また、8極化すると巻線工程が難しくなりますが、リーフで培ってきた高い生産技術を生かして実現させていきます」(大木氏)

アリアのAM67型モーター。ローターが8極構成であることがうかがえる。

 巻線界磁式同期モーターは運転条件に応じて能動的に界磁の状態を制御できることが最大の特徴で、ローターに強力な永久磁石を内蔵する永久磁石式のような、高回転で増大する逆起電力により見かけ上の電圧が低下するという問題が起きにくい。バッテリーの高電圧化という充電インフラまで巻き込む大掛かりな変更なしに、高回転のパフォーマンスと効率が確保できる点はEVにとって魅力的であり、アリアがこの形式を選択したのも納得である。

 いっぽうで永久磁石界磁式もEM47型で大きく進歩を遂げており、確かに巻線界磁型のほうが高回転を得意とする傾向はあるものの、実際の走行条件での効率は大差ないレベルとなっているという。効率の向上においてはEM57型よりも軸方向の寸法が短縮されたことも大きく効いているのだが(体格が小さくなることで鉄損が小さくなる)、さらに効率を向上すべく微小レベルの磁束がどのように振る舞うかということまでをも解析、ローター表面にコンマ数ミリの窪みを形成するという技術が盛り込まれた。

 永久磁石式と巻線界磁式、当面はe-POWERとEVで使い分けられていくが、将来的にレイアウト上の制約となるパワートレーンの構成が変われば、その線引きもなくなっていくかもしれない。

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