当日はあいにくの荒天。相当な土砂降りで、通常ならめげるようなコンディションとなりそうだが、この日は試乗車両に新型LiDARであるSCALA3のデモンストレーションも含まれていたため、むしろ降雨という悪条件でも正確に働く(であろう)新型センサーの威力を試せるだろうと気を取り直す。
まずは軽トラック型BEVから試乗。簡単なインストラクションを受けていざスタート。このクルマは前後にそれぞれ15kWの48Vモーターを積むスプリットAWDで、100km/hの最高速度。おそらく本車のベースであろうキャリイは37kW/59Nmという性能で、しかし本車はバッテリーなどを積むことから車重は増えているだろう。モーターの低回転大トルク特性で発進性能は向上しているか――などと考えながら走り出すと、少々荒削りな雰囲気ながらストレスのない発進。ストレートではフル加速を試せるメニューになっていて、こちらもあっけないほどの快速ぶり。何周かコースを試してみた感想は「なんだ、48Vシステムで充分に走れるじゃないか」である。ただし、アクセルオフやブレーキペダル押下時の回生制御は盛り込まれていなく、またクリープ制御も未設定だった。
続いてシトロエン・アミベースの「48Vライトeシティーカー」に試乗。こちらは市販状態でL6クラス適合車両であることから最高速度が45km/hに抑えられているところ、積まれている48Vシステムパフォーマンスをフルに発揮させることを目的に、モーター出力を高めバッテリー容量を増やし、最高速度は90km/hまで上げた仕様車。なお、こちらはFWDである。
左右共通というユニークな前ヒンジ@右/後ヒンジ@左ドアを開けて乗り込むと、必要最小限という印象の室内が迎え入れてくれる。走行のインプレッションは、誤解を恐れずに言えば、キャビン付きのオートバイ。ホイールベースが極端に短いことで、操舵に対するヨーの発生が機敏で、モーターの出力特性がそれを後押しする印象。NVHはもとより追求していない様子で、それゆえ小さく軽く作れているのだろう。そう。軽い車だけに、低出力でも48V駆動システムでも、きびきび走るのだ。
BEVを仕立てるためには高くて重いバッテリーとの兼ね合いがどうしても必要になる。長く速く走らせるなら巨大なパックが必要になり、そうすると急速充電が必要で、すると耐熱要件の観点から劣化はどうしても進行し――というジレンマに陥りがち。しかし、48Vシステムで構築する小さく軽く安価なBEVに試乗し、このパフォーマンスで不満を覚えない使い方をすればいいのではないか、しかもほとんどのシーンではその「不満」は感じないのではないかと感じ入った。