日立ハイテク:データ駆動型の研究開発を支援する電界放出形走査電子顕微鏡の新型2機種を発売

電界放出形走査電子顕微鏡 SU8600
日立ハイテクは、データ取得の自動化機能を強化した2機種のFE-SEM*1「SU8600」「SU8700」を発売した。FE-SEMは、半導体やライフサイエンス、材料開発などの幅広い分野において、微細構造の観察や計測・分析を行う際に活用されている走査電子顕微鏡。
*1. FE-SEM:Field Emission Scanning Electron Microscope、電界放出形走査電子顕微鏡

 FE-SEMは、得られる画像の分解能が高く、またその情報の豊富さや試料の取り扱いが比較的簡便なことから、ナノテクノロジー、半導体・エレクトロニクス、ライフサイエンス、材料などの幅広い分野において、微細構造の観察から計測、分析まで多岐にわたって活用されている。近年のマテリアルズ・インテグレーション*2をはじめとしたその活用分野・用途の広がりに伴い、大量データの短時間取得やそれに要する負荷の低減が求められている。こうしたニーズに応え、今回発売する本製品群では日立ハイテクがこれまで培ってきた高分解能FE-SEMとしての性能に加えて、大量データ取得を支援する自動化機能を強化した。

 SU8600は、微細構造の解析に必要不可欠な低エネルギー観察や、高分子などの電子線照射に弱い材料において高分解能観察が可能。SU8700は、低エネルギー観察から高い照射電流を要するEBSD*3分析まで、セラミックスや金属などの幅広い材料を対象とした、さまざまな分析手法の適用を可能にする。

電界放出形走査電子顕微鏡 SU8700

データ自動取得をサポート
 FE-SEMの観察や分析では対象や目的に応じて観察条件を変更・調整する作業が生じる。調整に要する時間はユーザーの熟練度によって異なり、このことがデータの質やスループットのばらつきを生じさせる一因になっている。本製品群は、この調整作業を自動化する機能を搭載し、安定した調整を可能とした。
 また、装置の性能向上に伴い、求められるデータの種類や量も増大している中、多種多量のデータを手動で取得することもユーザーの負担を増大させている。本製品群は、オプション機能「EM Flow Creator」を準備しており、ユーザー毎の取得条件に応じた自動データ取得を可能にすることで、これからのデータ駆動型研究開発に向けた大量データ取得をサポートする。

取得情報の種類、量を増加
 SEMからはさまざまな信号が得られるが、本製品群では同時に最大6つの検出器信号を表示・保存することが可能。画像取得回数は少なくしつつ、多くの種類の情報を取得する。
 また、一度に大量の情報を取得するために最大画素数を現行機種*4の64倍にあたる40,960×30,720画素まで拡張した*5。この機能により、一枚の画像データから複数の局所微細構造を評価することが可能になる。

信号検出能力の強化
 SU8600では、複数の新型オプション検出器が開発され、凹凸情報、発光情報の検出能力が強化されている。また、反射電子信号検出においては応答性の高速化が図られている。
 SU8700では、短WD*6でEDS*7分析が可能な試料室設計がなされており、EDS分析の高空間分解能化を図ることで、より微小な部位の分析が可能となっている。

*2. マテリアルズ・インテグレーション:材料開発期間短縮を支援する、理論/実験/データ解析/シミュレーション/データベースを融合活用した総合的な材料技術。
参考: https://www.jst.go.jp/sip/k03/sm4i/project/project-d.html
*3. EBSD:Electron Back Scatter Diffraction (電子線後方散乱回折)。結晶性試料の方位解析に用いる手法。
*4. RegulusシリーズFE-SEMとの比較
*5. オプションで拡張可能。
*6. WD:Working Distance(作動距離:SEM対物レンズと試料間の距離)
*7. EDS:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy(エネルギー分散型X線分析)

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