可変排気量エンジン:2気筒分のクランク回転を止める?[内燃機関超基礎講座]

可変気筒エンジンはすでに珍しくない。直4の2気筒を休止させる例もすでにある。しかし、ドイツ・IAVのシステムは燃料カットやバルブ休止ではなくクランクシャフトの回転を停めてしまうものだ。当然、ピストンの上下運動もなくなる。実用化例はまだないが、エンジニアリング会社らしいシステムである。
TEXT:牧野茂雄(MAKINO Shigeo)

2気筒ずつセットになったエンジン2基が連なって配置され、必要に応じて2/4気筒運転を行なうIAVの「Inline 2+2 cylinder switch in」方式のコンセプトエンジン。フライホイール側の2気筒は常時駆動され、運転状態に応じて後方の2気筒が参加する仕組みである。

カムシャフトは4気筒分の長さのものが吸気/排気バルブにそれぞれ1本のDOHC。気筒当たり4バルブである。カムシャフト駆動はチェーンで行なわれ、クランク軸先端にフライホイールがある。前2気筒と後方2気筒はクランク軸が分離されており、クランク軸と平行なバランサーシャフト兼用軸とはスパーギヤでつながっている。組み合わせる変速機についての説明はないが、通常の変速機だけでなく電動モーターと組み合わせたハイブリッド仕様も可能だとIAVは提案している。

ピストン冠面側から見ると構成がよくわかる。クランク軸と平行な軸は2ヵ所のギヤでクランク軸と接する。この軸はバランサーを兼ねており、2気筒めと3気筒めの間にクラッチがある。4気筒運転のときはクラッチで軸が一体化される。重量と部品点数は増えるだろう。

アイドリングと発進は2気筒で行なわれる。2気筒にすることでアイドリング時のフリクショントルクは約4Nm減るそうだ。トルクが必要になったら、クランク軸と平行に位置した軸の中央にあるクラッチをつないで4気筒運転に入る。詳細は不明だが、おそらく、排気量を半減させて高負荷域を使い、燃費の悪い領域を避けるねらいだろうか。6000rpmで2気筒運転すれば、フリクショントルクは4気筒比で約6Nm小さくなる。想定しているのはガソリン直噴NAエンジンだという。

興味深いのは、2気筒ずつのクランク位相が同じ点である。2気筒そろって上下する。点火は360°位相になるが、機械運動としてはアンバランス成分が出やすいだろう。また、スライドカムを採用し、リフトは2~3段階に切り替えられる。いままでに見たことのない独創的な気筒休止エンジンだが、IAVに50%を出資する大株主はVWであり、もしかしたら……という思いも頭をよぎる。ぜひとも実物を拝見してみたいエンジンである。

こうしてピストン系のスケルトンで見ると通常のエンジンとあまり変わらないが、クランク軸と平行のバランサー軸はブロック側面に張り出すので、エンジン重量は増加するだろう。「それ以上の効果がある」とIAV。カムシャフトはIAVが開発したスライドカムである。

キーワードで検索する

著者プロフィール

牧野 茂雄 近影

牧野 茂雄

1958年東京生まれ。新聞記者、雑誌編集長を経てフリーに。技術解説から企業経営、行政まで幅広く自動車産…