CB18 まさに「カミソリクランク」基本骨格から刷新されたスバル・レヴォーグの水平対向4気筒リーンバーンターボ

スバルの1.8ℓリーンバーンターボ「CB18型」とはどんなエンジンか? レヴォーグ搭載の新エンジンはスバルの最新技術が詰まっている(前編)

スバルの新型レヴォーグは、1.8ℓ水平対向4気筒リーンバーンターボが搭載されている。型式名は「CB18」。このCB型BOXERは、スバルの技術の粋が詰まった意欲作だ。あらためて技術ハイライトを見ていこう。
TEXT◎鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi〕PHOTO◎山上博也(YAMAGAMI Hiroya)

FUTURE BOXER(FB)からCONCENTRATION BOXER(CB)へ

レヴォーグが搭載する完全新規開発されたCB型1.8ℓ水平対向4気筒DOHCターボエンジン エンジン形式:水平対向4気筒DOHCターボ エンジン型式:CB18 排気量:1795cc ボア×ストローク:80.6mm×88.0mm 圧縮比:10.4 最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm 最大トルク:300Nm/1600-3600rpm 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:レギュラー

スバル・レヴォーグが搭載するエンジンは、完全新規開発した水平対向4気筒ターボである。2010年にデビューしたFB型から10年、2020年代のスバルを支える主力エンジンの型式名は「CB18型」となる。

見所の多いCB18エンジンを可能な限り詳細に解説したい。

まずは、型式名だ。「EJ型」「EE型」から「FB型」「FA型」と「EからFへ」の次なので、「G」が頭文字になると予想した人もいるだろう。新型エンジンは「CB型」と名付けられた。現行主力エンジンのFB型は「Future Boxer」の意味が込められていた。今回の新エンジン、CBは「Concentration Boxer(Concentration=集中、濃厚)」の頭文字だという。
「FBを開発してから約10年経つのですが、その間にどうしてもやりたかったことが溜まってきていました。とにかくそれを全部つぎ込んでやろう、我々の持てる技術をすべて結集しましたという意味を込めてCBにしました」と開発エンジニアは語る。

本稿はまずCB型エンジン解説の前編として、その骨格について詳解する。

CB18型新開発エンジン

CB18 ボア×ストローク:80.6mm×88.0mm ボアピッチ:98.6mm クランク長:315.9mm

FB16型現行エンジン

ボア×ストローク:78.8mm×82.0mm ボアピッチ:113.0mm クランク長:350.5mm

まず、大きく変わったのは、エンジンの骨格を決める「ボアピッチ」が大幅に短縮されたことだ。
EJ型からFB/FA型まで続いた113.0mmというボアピッチがCB型では98.6mmに短縮された。じつに14.4mmの短縮である。ボアピッチが短くなったことで、クランク長もFB型の350.5mmから315.9mmへと34.6mmも短くなった。

ボアピッチは、従来のFB型の113.0mmから98.6mmへ14.4mm短くなっている。したがって、クランク長は40.3mmも短くなった。

これはつまり、エンジンの全長が短くなることを意味する。CB18型は現行FB16型より全長が約40mm短くなっている。スバルの宿命として、フロントオーバーハングに水平対向エンジンが載ることになるのだが、新型ではエンジン長が短くなったことで約20mm重心が後方へ移動できたという。

現行FB16DIT型1.6ℓ水平対向4気筒ターボエンジン

現行のF型(FA型/FB型)のボアピッチは113.0mm。これは、最大94.0mm(2.5ℓのFB25型)のボア径に対応するため。1.6ℓのFB16型の78.8mmのボア径に対しては大きすぎるボアピッチだったのだ。

CB18型の98.6mmのボアピッチは80.6mmのボア径に最適化している。これは、「C」型の新エンジンの排気量の上限が1.8ℓであることを示唆している。エンジニアは、「排気量ダウンは可能。排気量アップは絶対にしないという約束はできないが、1.8ℓを上限に開発しました」という。

新型のピストン冠面の形状はこうなっている。
ピストンスカートは、ピストンが上昇するときにシリンダー壁に当たる部分と下降するときに当たる部分がある。パターンコートはDLCではなく樹脂系のコーティングが施されている。
V型(右写真)は上昇するときに油をかき集めていく構造になっている。裏側は∧型(左写真)になっていて、下降するときに油を集めていく構造になっている。真中にオイルを集めてフリクションを下げる効果を狙っている。
まさに「カミソリ」のようなクランクウェブ。スバルしか造れない形状だ。

ボアピッチが短くなったことで、クランク長も34.6mm短くなった。それを可能にしたのは、「カミソリの薄型化」である。スバルの水平対向エンジンのクランクは、薄いクランクウェブゆえにその独特な形状から「カミソリクランク」と言われてきた。今回のCB18を見ると、現行のFB16のクランクウェブは「カミソリ」ではなく「斧」くらいに見える。そのくらい新型のクランクウェブは薄い。「設計と言うより、製造の面でこれ以上薄くは造れない。水平対向エンジンを作り続けてきたスバルだからこそ造れるクランクです」とエンジニアは話してくれた。これだけ薄くても、強度はFB型より新型CB型の方が高いというのも驚きだ。

CB18型はクランクセンターに対してボアセンターを8mmオフセットするオフセットクランクを採用している。

結果、CB18型は排気量がFB16型より196cc排気量アップしたにもかかわらず、全長で40mm短く重量も補機込みで5kg軽く仕上がった。補機はCB型の方が多くのデバイスを採用しているので、主機のみでは10kg以上CB型が軽い。

ボア×ストロークは?

新型CB18型のボア×ストロークは80.6mm×88.0mm。ストロークをボアで割ったS/B比は1.092である。
現行のFB16は、78.8mm×82.0mmでS/B比は1.04だ。効率を追求するためにロングストローク化するエンジンの例に漏れずスバルの水平対向もCB型でロングストローク化してきたわけだ。

水平対向エンジンの全幅を決めるもっとも大きな要素はストロークだ。FB型の場合2.5ℓのFB25と2.0ℓのFB20のそれは90.0mm。つまりストローク88.0mmのCB18エンジンは現行スバル車でBRZを除く全モデルに搭載可能だということだ。

エンジンの性格を決める圧縮比は、現行FB16DITが11.0なのに対して、新型CB18DITは10.4と低めに設定してきた。最高出力もFB16DITの170psからわずか7psアップの177ps、トルクは50Nmアップの300Nmとしている。

後編では、さらに新型エンジンの詳細に迫ってみる。

キーワードで検索する

著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…