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内燃機関超基礎講座
S/B=0.75という超ショートストローク型エンジンであるポルシェの3.8ℓ水平対向6気筒ターボ

ストローク長をボア径で割ったものを一般的にS/B比という。たとえば、前型トヨタ86/スバルBRZが搭載していた2.0ℓ水平対向4気筒エンジンのボア×ストロークは
86.0mm×86.0mmなので、S/Bは1.00。
これをスクエア型という。

対して、燃費対策を重視することで最近多くなっているロングストロークは、S/B比が1.00を超えるものをいう。

現在、国産メーカーのエンジンでもっともロングストローク型なのは、ホンダのS07B型だ。軽自動車用エンジンである。
排気量 658cc
内径×行程 60.0mm×77.6mm
だから、S/B比は1.293にもなる。

なぜそロングストロークのエンジンがが燃費型なのかといえば、冷却損失の小ささが理由だ。シリンダー内壁と燃焼室部分の表面積を計算すると、ロングストロークエンジンはショートストロークエンジンよりも小さい。これは、シリンダー壁面から冷却水に奪われる熱量が小さい、つまり熱損失が少ないことを意味する。

国産でもっともショートストローク型だったのは、スバルの2.0ℓ水平対向4気筒ターボのEJ20だった。S/B比は0.815だった

対して、ショートストロークのエンジンは、「高回転型」と言われる。したがって、これまでも、スポーツカーのエンジンはショートストローク型が多かった。7000rpmあるいは8000rpmまで気持ちよく噴け上がるショートストローク型エンジンはマニアに人気だった。

では、現在ラインアップされているエンジンでもっともショートストロークのエンジンはなんだろう?

新型トヨタGR86/スバルBRZのFA24型2.4ℓ水平対向4気筒のボア×ストロークは94.0mm×86.0mmだからS/B比は0.915とショートストローク型になった。

国産エンジンでいえば、スバルWRX STIが搭載していた名機と謳われた「EJ20型」2.0ℓ水平対向4気筒ターボが
屈指のショートストローク型で
総排気量:1994cc
ボア×ストローク:92.0mm×75.0mm
でS/B比は0.815だった。

VQ35HR 気筒配列:V型6気筒 排気量:3498cc 内径×行程:95.5mm×81.4mm 圧縮比:10.6 最高出力:225kW/6800rpm 最大トルク:350Nm/5000rpm 給気方式:自然吸気 カム配置:DOHC 吸気弁/排気弁数:2/2 バルブ駆動方式:直接駆動 燃料噴射方式:PFI VVT/VVL:In/○

EJ20型が生産中止になったいま国産エンジンでもっともショートストロークなのは、
フーガハイブリッドなどが搭載する日産VQ35HRエンジンだ。
3.5ℓV6DOHCで
排気量:3498cc
ボア×ストローク:95.5mm×81.4mm
S/B比は0.85
である。

では、海外メーカーではどうだろう?
もっともショートストローク型は、ポルシェ911ターボが搭載する3.8ℓ水平対向6気筒DOHCターボ(DAB型)である。
3.8ℓ水平対向6気筒DOHCターボで
排気量:3745cc
ボア×ストローク:102.0mm×76.4mm
S/B比は0.75

である。ポルシェの水平対向エンジンはターボ/NAともにすべてショートストローク型だ。

ちなみにフェラーリエンジンでもっともショートストロークなのは、GTCルッソが積む6.3ℓV12エンジン(S/B比0.80)。
アストンマーティンでもっともショートストロークなのは、DB11が積む5.2ℓV12エンジン(S/B比0.78)である。

ランボルギーニの6.5ℓV12エンジンのS/B比は0.80。やはりスーパーカー系のエンジンは現在でもショートストローク型が多い。

新型トヨタGR86/スバルBRZのエンジンは、「究極の自然吸気水平対向エンジン」を目指したスバル技術陣渾身の作だ

新型トヨタGR86/スバルBRZの搭載エンジンは、2.4ℓ水平対向4気筒である。ターボ過給なしの自然吸気エンジンが目指したのは低重心のパッケージマッチする高回転型ボクサーだ。「究極の自然吸気水平対向エンジン」の開発過程を訊いた。

https://motor-fan.jp/mf/article/1636/
M838T 形式:水冷90度V型8気筒DOHC 総排気量:3799cc ボア×ストローク:93.0×69.9mm 圧縮比:8.7 最高出力:447kW/7000rpm 最大トルク:600Nm/3000-7000rpm 過給の種類:ターボチャージャー ×2

もう1基、超ショートストローク型のエンジンがある。
マクラーレン570Sなどが搭載するM838TE型だ。

3.8ℓV8DOHCターボで
排気量:3799cc
ボア×ストローク:93.0mm×69.9mm
S/B比はポルシェ911ターボと同じ0.75である。

内燃機関超基礎講座 | マクラーレンV8エンジンの開発プロセス。ターボでV12を超える。|Motor-FanTECH[モーターファンテック]

V12エンジン縦置きミッドシップだった超スーパーカーのモデルチェンジ。V12搭載のライバルたちに負けない性能を確保するのは当然のことであり、しかしエンジンに求められたのは「小さく」「短く」「軽く」「安く」といった要件だった。TEXT:牧野茂雄(MAKINO Shigeo) PHOTO:McLaren/RICARDO

https://car.motor-fan.jp/tech/10016175

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