日本製鉄:自動車向けソリューション提案によるライフサイクルでの温室効果ガス排出量削減効果の定量化について

日本製鉄は、鉄鋼製造プロセスでのカーボンニュートラルの実現に取り組むとともに、次世代鋼製軽量自動車コンセプト“NSafe-AutoConcept(以下、NSAC)”の提案により、自動車のライフサイクル全体での温室効果ガス排出量削減に取り組んでいる。

日本製鉄は、自動車車体および車体を構成する各部材の軽量化を中心とするソリューション提案時に、当該提案が温室効果ガス排出量削減にどの程度効果がある取り組みかを明確にするため、部材設計段階でのLCAによる温室効果ガス排出量削減効果の定量評価を開始した。
具体的には、自動車一台のライフサイクルでの温室効果ガス排出量を、WorldAutoSteelが公開しているUCSBモデル5を用い、その算出結果から対象となる自動車部材の寄与分だけを抽出して評価を行う。

WorldAutoSteel: UCSB Energy & GHG Model
https://www.worldautosteel.org/life-cycle-thinking/ucsb-energy-ghg-model/
カリフォルニア大学サンタバーバラ校が開発した自動車LCA計算モデル。本モデルでは、鉄鋼、アルミ合金、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)など、車体を構成する素材毎に大きく異なる温室効果ガス排出原単位の影響を加味した評価、および素材構成比が温室効果ガス排出量に与える影響の検討が可能。

鉄鋼は、製造時に排出する温室効果ガス排出原単位が低く、また、実質的に全量がリサイクルされ新たな温室効果ガス排出を低減しているサステナブルな素材。日本製鉄は、鉄鋼製品の最大活用が、自動車におけるライフサイクルでみた温室効果ガス排出量削減に大きく寄与できるポテンシャルを持つと考えている。
具体的な評価例として、日本製鉄が提案するNSACに基づいた2.0 GPa級ホットスタンプ材を用いた鋼製軽量バンパービーム(以下、NSAC鋼製バンパービーム)と、従来型の鋼製バンパービームについて、温室効果ガスの排出量をLCAにより評価した結果を下図に示す。なお、参考として、NSAC鋼製バンパービームと同等性能のアルミ押出し材を想定したバンパービームの試算結果も示す。

図.各種バンパービームのLCAによる温室効果ガスの排出量評価

この図の通り、NSAC鋼製バンパービームは、製造時と走行時の温室効果ガスの排出量が少なく、ライフサイクル全体での排出量が少ないという結果が得られた。これは、NSAC鋼製バンパービームによる軽量化で素材使用量が減少したことにより、製造時、および走行時の温室効果ガスの排出量が削減されたことの効果によるもの。
なお、リサイクル効果については、素材によりリサイクルの考え方が異なるため、ここでは示していないが、その効果を考慮した定量評価も可能。

現在、日本製鉄は、顧客に提案する車体軽量化、衝突安全性の向上、およびコスト低減に向けた各種ソリューション技術の開発に取り組んでいる。今後は、これらのソリューション提案に加えて、ライフサイクルでの温室効果ガス排出量の削減に向けた提案も行い、顧客と共に、ゼロカーボン社会の実現に向けた開発をより一層進める。

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