【モーターファン・イラストレーテッド Vol.136より転載】
ターボチャージャーはエンジン回転数が上がるほど排気量が増えることでどんどん高回転となり、タービンの効率も上がる。だが、タービン軸受の熱限界があると同時に、一定以上の回転数になると流速が音速を超えてサージングもしくはチョークと呼ばれる劇的な効率低下に陥る。そのためタービン手前にウェイストゲート(WG)なるバルブを設け、過給圧が基準を超えるとこれを開いて排気をタービンに導かずにマフラー側へ流す。
WGは通常は閉じていて、緊急時に開く——というのがタービン制御の原則であった。ところが、最近のターボ車は通常時にはWGは開いておき、過給が必要な時にだけ閉じるという真逆な制御を行なっている。
これにはふたつの理由がある。いまのターボエンジンは以前に比べて高圧縮比を採っており、無過給でも必要充分な出力は出せる。普段からターボを効かせると燃費が悪化するから、低負荷ではNAで走り、いざ加速となった時にWGを閉じてターボを働かす。
もうひとつはちょいとややこしい。ガソリンエンジンがディーゼルに比べて効率が劣る理由はポンピングロスだ。過渡域でスロットルバルブが吸気の邪魔をしてエンジンがポンプの仕事をしなければならない、というあれだ。なので、低回転でターボ効率が悪い時はスロットルで、効率点を超えるとスロットルを全開にしてWGで出力制御をするという技法が現れたのだ。通常閉じているとは言え多少はタービンへ排気を流しているものの、これではタービンを働かせたいときのレスポンスは芳しくないことは明らか。そこで、時流とは逆に通常WGを閉じる「ノーマルクローズ制御」をスズキでは採用している。