トヨタの技術の粋を集めた2.0ℓ直4ターボのクランクシャフト:8AR-FTS[内燃機関超基礎講座]

トヨタ・クラウンやレクサスISなどが搭載する2.0ℓta-bo8AR-FTS型のクランクシャフト
エンジンの3C部品とは、クランクシャフト/カムシャフト/コンロッドのことをいう。そのなかでもクランクシャフトは、ピストンが受ける燃焼圧力をコンロッドを介して往復運動から回転運動に変換して動力として取り出す、レシプロエンジンの心臓部だ。トヨタ・クラウン、レクサスNX/IS/RXなどが搭載する2.0ℓ直4ターボエンジンの8AR-FTS型のクランクシャフトにはトヨタの技術の粋がつまっている。

モーターファン・イラストレーテッド vol.117「エンジン回転系部品大図鑑」より転載

トヨタのAR系エンジンは、いつでも各国のエンジン製造ラインに投入できるように加工基準の共通化にもこだわっている。そのうえで、排気マニフォールド一体型のシリンダーヘッド等の新技術もしっかり織り込んでいる。新しいアイデアを安易には取り入れない。現行製品との設備共有、加工基準共有もしっかり考慮しながら、最適な形を創り上げる。それがトヨタのやり方だ。そして、ジャンプするときは一気にジャンプする。
「 ARエンジンはファミリーが多く、FFとFRにまたがり、ハイブリッド仕様もあります。これらをいかにうまく共通の生産ラインに乗せるかという点にもこだわりました。加工基準と素材基準は共通です。たとえばターボ仕様ではエンジン内部のブローバイシステムが特殊だったり、エンジンブロック外壁の補強リブが違っていたりしますが、基本はいつでもどこでも生産できるようになっています」と開発エンジニアは説明する。

ARエンジンは2.0ℓから2.7ℓまでの排気量でNAと一部過給仕様とハイブリッド仕様を持つ。搭載車両はFFとFRにまたがり、トヨタのなかでも大きな勢力になった。この仕様の鍛造クランクシャフトは中央にバランサー出力用のギヤを配置するが、これも含めて一体鍛造である。この角度から見るとウェブ表面に高周波焼き入れの跡を確認できる。摺動部とフィレット部に高周波焼き入れを行なっているが、この焼き入れ方法は元来、形状変形しやすい。そのため焼き入れの順番を工夫し、もっとも曲がりが小さくなる(と言っても最大で0.1mmオーダー)ような焼き入れ順序を考案した。カウンターウェイト頂部には重量バランス取りのために肉を盗んだ穴が見える。

トヨタ8AR-FTSのクランクシャフト SPECIFICATION
ストローク 86mm
全長 500mm
ジャーナル径 55mm/ジャーナル幅 22mm
ピン径 52mm/ピン幅 19.6mm
ウェブ幅 21mm
重量 11280g

8AR-FTS
シリンダー配列 直列4気筒
排気量 1998cc
内径×行程 86.0mm×86.0mm
圧縮比 10.0
最高出力 180kW/5800rpm
最大トルク 350Nm/1650-4000rpm
給気方式 ターボチャージャー
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 DI+PFI
VVT/VVL In-Ex/×

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