コンチとシェフラーが呉越同舟、95g/kmとEURO6cを達成した実験車GTC[内燃機関超基礎講座]

コンチネンタルとシェフラー。ともにドイツ系のメガサプライヤーでありライバルである2社だが、95g-CO2/kmとEURO6c規制をクリアするために手を携えたことがある。両社のテクノロジーをふんだんに盛り込んだ実験車:GTCは2014年に欧州で発表され、翌年には日本でも試乗会が行なわれた。
TEXT:高橋一平(Ippey TAKAHASHI)

運転の楽しさを犠牲にすることなく、今後の規制をいかにクリアしていくのか? こうしたテーマに基づき、コンチネンタルとシェフラーが、そのソリューションや技術を一台にまとめあげたのが、ガソリンテクノロジーカー(Gasoline Technology Car、以下GTC)だ。

フォード・フォーカスをベースに、最大噴射圧を35MPaに高めた次世代型のガソリン直噴システムや、電気加熱式触媒(EHC)、ヒートマネージメントシステムなどの導入、エンジン本体の効率と、排ガス後処理の能力を引き上げ、これに48V電源のマイルドハイブリッドシステムを組み合わせることでエンジンの苦手とする領域をアシスト。さらにバイ・ワイヤークラッチを採用することで(トランスミッションは6速MTだ)、未熟な操作や、操作ミスに伴うアクセルの踏み直しによる無駄までもすくいあげ、EURO6c規制をクリアする環境性能の確保に成功している。

GTCに用いられた技術手法の効果を、それぞれに相当するCO2削減量として示したもの。48Vハイブリッドシステムと、それに伴うダウンスピーディングがいかに効果的であるかわかる。システム全体の相乗効果(-2.5%)も見逃せない。なお、これらの前提となる、EURO6cをクリアする94.6g/kmという数値は実走試験で確認されたものだ。
エンジン本体はフォーカスに搭載される3気筒1.0ℓのエコブーストそのままだが、補機類の大部分が2社によって開発中の次世代品に置き換えられている。エンジンルーム助手席側奥のバッテリーは一般的な12Vのものだ。
48Vのリチウムイオンバッテリーは車両後部のスペアタイヤ用スペースに収められる(右側の黒い箱)。その左側に見える放熱フィンの刻まれたアルミ製の箱は、12V系に電力を供給するためのDC-DCコンバーター。
燃焼状態の最適化と排気ガスの後処理、ダウンスピーディング、48Vハイブリッド化、そしてサーマルマネージメント、GTCではこれらの技術手法を用いることによって、パフォーマンスとドライビリティを維持しながらEURO6cをクリアすることに成功している。

試乗は駐車場内の往復という、限られた条件だったこともあり、ISGによるトルクアシストの存在を感じ取ることは出来なかったが、逆にいえばそれだけ違和感がなくさりげない。もちろん、実感できないだけで、力強さは充分以上だ。違和感のなさはコースティングからの復帰も同様で、ここには48VのISGによるスムーズで素早い再始動が大きく効いているという。確かに一般的な12Vスターターのクランキングが息絶え絶えに感じられるほどの素早さだ。

48V電源はISGやEHCなどの環境性能の確保において48Vならではの“大きな取り分”が期待できる部分に用い、灯火類やエンジンマネージメントなどには従来通りの12V電源が併用されるという。なお、両社が予測する48V電源の普及率は2025年で11%程度。なるほど、48Vという技術はこういうものだったのだ。

クラッチ・バイ・ワイヤーシステムは、ドライバーのペダル操作に倣うかたちでクラッチ操作するだけではなく、未熟な操作や、操作ミスも補正。コースティング時にはペダル操作とは関係なく、クラッチの断続動作を行なう。
ISGによるトルクアシストの効果で、20km/hそこそこで3速に入れても、アクセル操作にエンジンがしっかりとついてくる。その感覚も、わずか1.0ℓのエンジンであることを忘れてしまいそうなほどに自然だ。

GTCのベースとなったのは、欧米で高い評価を得ている3気筒1.0ℓのエコブーストエンジンを搭載するフォード・フォーカス。タペットへのDLC処理以外、エンジン本体には手が入れられていないため、最高出力はそのままだが、15kWの出力を持つISGによるトルクアシストが加わる。なお、48V電源が使われるのは、ISGや電気加熱式触媒など大電力を必要とする部分のみ。灯火類や照明、エンジンECUなどは12V仕様のままで、12Vの鉛バッテリーも残されている。オルタネーター(ISG)は48V仕様のものに交換されているため、12V系にはDC-DCコンバーターを通して電力供給が行なわれる。

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