鈴廣、ホンダ:EVを蓄電池として活用し、EV・建物間で効率的に電気を融通するエネルギーマネジメントの共同実証を開始

鈴廣蒲鉾本店と本田技術研究所は、環境負荷ゼロの循環型社会の実現に向け、電気自動車(EV)を移動手段としてだけでなく、蓄電池としても活用し、EVと建物間で効率的に電力を融通するエネルギーマネジメントの実証実験を2022年2月に共同で開始した。

鈴廣は、店舗や工場への太陽光発電・太陽熱給湯システムなど再生可能エネルギー設備の導入や、 ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)※1 本社社屋を建設するなど、エネルギーの地産地消に積極的に取り組んでいる。一方、Hondaは、2050年にHondaの関わる全ての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルの実現を目指して、建物・車両の包括的なエネルギーマネジメントを行う「Hondaスマートホームシステム」の研究を行うなど、再生可能エネルギーの活用拡大に貢献するエネルギーマネジメント技術の研究・開発に取り組んでいる。

このように、脱炭素社会を見据えた取り組みを通じて、2050年までのCO2排出量実質ゼロを目指す地元神奈川県小田原市の政策に呼応すべく、循環型ビジネスへの取り組みとしてエネルギーの地産地消を目指す鈴廣と、再生可能エネルギー活用拡大に向けてエネルギーマネジメントシステムの実用化を目指すHondaの方向性が一致したことから、今回共同で実証実験を行う。

今回の実証実験は、小田原市にある鈴廣本社を中心とし、主に小田原市内でEVを走行させて実施。HondaがEVとエネルギーマネジメントシステムを用意し、鈴廣がそれらを日常業務で使用する。
具体的には、EVを取引先訪問などの移動時に使用するとともに、移動に使わない時には蓄電池としても活用し、必要に応じてEVから鈴廣本社社屋に電力供給を行う。業務用EVを社屋のエネルギーマネジメント用の蓄電池としても活用するため、社屋用蓄電池への新規投資を抑制する効果が期待できる。
これにより、鈴廣とHondaは「社屋全体の効率的な電力利用」「EVによる効率的な移動業務」 の2つを最適なバランスで両立させ、CO2の排出量削減とピークカット※2による電気代の低減を目指す。

また、Hondaはこの実証実験を通じて、ユーザーにとっての経済的メリットの検証と、将来に向けたエネルギーマネジメントシステムのビジネスモデルの検討も行う。
実証ではHondaが新たに開発した「エネルギーマネジメントシステム」EV利用時の消費エネルギーを最適化する「運行管理システム」、「バッテリーシェアリングマネジメントシステム」の3つのシステムを使用する。

■エネルギーマネジメントシステム
電気料金の安い時間帯にEVを充電し、電気料金の高い時間帯にはEVから社屋に電力を供給することでピークカットを行う。このシステムは、Hondaが2012年から埼玉県にある実証ハウスで研究を続けている「Hondaスマートホームシステム」で培った技術を活用しており、システムに搭載されたAIが、社屋に設置された既存の太陽光発電などのデータも学習した上で、電力需給の予測を行う。

■運行管理システム
鈴廣従業員が、外出にあたり入力したEV利用予定を基に、車両のデータを活用して、最も消費電力が少なく、短時間で効率的に移動できるルートを計算し、提案する。

■バッテリーシェアリングマネジメントシステム
社屋の電力需給の予測と、EVの利用予約に基づき、いつEVを走行させるべきか、いつ充電すべきか、そしていつEVから社屋に電力供給すべきか、といったEVのバッテリー活用に関する全体調整を行い、エネルギーマネジメントと運行管理を最適なバランスで両立させる。
エネルギーマネジメントシステム 「Honda Power Controller e Concept(パワーコントローラー イーコンセプト)」
実証実験のシステム概略図

 なお、実証実験の期間は2022年2月~2023年2月の予定。

※1 ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)
Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。
※2ピークカット
1日のうち電力需要の多い時間帯の電力使用を抑えることで、電力の基本料金を削減する手法のこと。

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