BMEPは驚愕の28.72bar。トヨタGRヤリスのエンジンは化け物だった!

トヨタGRヤリスのエンジンは化け物レベル!GR4のためだけに仕立てた、その名は「G16E-GTS」

東京オートサロン2020でお披露目となったトヨタGRヤリス。3気筒の1.6ℓという形式はこれまでのトヨタにはないものだったので、いろいろうかがってみた。

 与えられた型式はG16E-GTS。「完全なる新開発エンジンです。GRヤリスのためだけに仕立てたエンジンです」とエンジニア氏は説明する。結果的にボアピッチはほかのダイナミックフォースエンジンシリーズとそろう格好にはなったが、それありきという要件があったわけではない。ボア×ストロークは、87.5mm×89.7mmとショートストロークではなく、現代のトレンドであるロングストローク。ボアとストロークの組み合わせについてはゼロベースで大量検討、そのなかから、「ラリーではどういう回転数でどのようなトルク発揮で使うか」を調査し、そこからふさわしい機械寸法を探っていったときに得られた。

 圧縮比は10.5である。
 燃料噴射はD-4Sだから、筒内燃料直接噴射とポート噴射を併用している。

 スペックを記しておくと(欧州仕様。日本仕様とは異なる場合があるかもしれない)

エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ
エンジン型式:G16E-GTS
排気量:1618cc
ボア×ストローク:87.5mm×89.7mm
圧縮比:10.5
最高出力:272ps(DIN表示で261hp)
最大トルク:370Nm

 となっている。

 WRCのイメージをエンジンとパワートレインでも引き継ぎたい。加えていまのWRCレギュレーションが1.6ℓということで、1618ccという排気量とした。3気筒という形式を選んだのはGRヤリスというクルマを軽量コンパクトに仕立てるためだったが、排気干渉が生じないことによる中低速トルクの豊かさとハイパワーとの両立、レスポンスの高さなどをすべて満足させるには結果として最適だったという。

3気筒で排気干渉がないのでターボチャージャーはシングルスクロール式。ウェイストゲートは負圧で駆動する電子制御式

 3気筒エンジンの特質から排気干渉は生じないため、ターボチャージャーはシングルスクロールタイプ。レーシングドライバーからのヒアリングを多数重ね、とにかくレスポンスを追求する過給特性とした。そのため、ウェイストゲートのノーマルオープン制御では通常の使用状況では大丈夫かもしれないがレーシングドライバーからの要求には応えられず、いわゆる通常のウェイストゲートターボの使い方としている。「トヨタの都合とかエンジニアの都合じゃなくて、クルマを運転する人の都合、つまりプロドライバーのために作ったエンジンです」というエンジニア氏の言葉が、その性格を如実に表している。

 1618ccで最高出力200kW/370Nm。BMEPで計算してみると28.72bar。驚愕の数字である。

G16E-GTS型の燃焼室

 急速燃焼コンセプトは継承しつつ、「ややロングストロークだがほぼスクエア」という内径行程寸法にしたことから、吸気ポートを工夫するなどして急速燃焼を実現した。カットモデルをご覧いただくとお分かりのように、これまでのダイナミックフォースエンジンと同様のストレートポート構造としていて、これにもまたレーザークラッドバルブシートが寄与しているのかと思ったら、今回のエンジンには使用していないという。「ひょっとするとこのエンジンはレースに使われるかもしれなく、あとから打ち替えられる通常のシートのほうがいいという判断です」と説明してくれた。

 とはいうものの切り込むような急角度のポート形状は通常のバルブシートでは難しいというのがレーザークラッドバルブシートの美点だったはずで、ならばどうなっているのかとよく観察してみると、どうやら機械加工がなされている様子。パフォーマンスのために手間を惜しまずというのがよくわかる構造で、しかしコスト上昇を最小限に抑えるために「ボールエンドミルでひとさらい」で済む設計としている。

ポート噴射と筒内噴射を併用するD-4STを採用。最大噴射圧はほかのTNGAエンジンと同等レベルだという。
4気筒に対してどうしても不利な振動対策としては1次バランサーを備えて対策、さらに車体側ではエンジンマウント位置の最適化がなされた。
VVTは吸排気ともに装備。アイドルストップ制御もきちんと盛り込んでいる。
ウォーターポンプはベルト駆動の機械式。電動式は高出力を満足させるにはまったく流量が足りずに検討にはのぼらなかったという。
変速機は6速MTを組み合わせる(サプライヤーはアイシン)。ギヤ比の最適化と軽量化が施された。

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