直6+トリプルターボ! BMW-MのハイパフォーマンスディーゼルN57S型[内燃機関超基礎講座]

「バイエルン発動機製造」という素っ気ない社名であるBMW。二代目X5のMモデルに搭載された、その社名を誇るがごとくのハイパフォーマンスディーゼルエンジンはターボチャージャーを3機備えることになった。

BMWのモータースポーツ部門を担うM社によるハイパフォーマンスモデル、「X5 M50d」に搭載されるユニット。N57D30型をベースとして、究極ともいえる高度なターボシステムを組み合わせ、740Nmという圧倒的なトルクを広い範囲に渡って発生する。

ふたつのターボによる二段過給や、運転状態に応じ作動させるターボの数を変化させるシーケンシャル動作などを組み合わせることで、あらゆる運転状況において最適な応答性と過給圧を確保するというものだが、もはや作動図を見た程度で理解することは困難なほどに複雑なものとなっている。高過給に対応するコモンレール式直噴システムの最大噴射圧力は2200bar。インジェクターには応答性に優れるピエゾ式を用い、複雑なシステムに求められる、きめ細かくも迅速な燃料制御を実現している。

3基のターボのうち2基(上側のふたつ)にVG機構を搭載。2000rpmという低回転から740Nmの最大トルクを発生しながら、5400rpmという異例なまでに高いレブリミットを確保している。
低回転域。上部前側(写真右側が前方向)に位置する小型ターボユニットがアイドル回転数から運転を開始する。このターボユニットはVG機構を持っており、低回転域においては可動ベーンを寝かせることで排ガス通路を狭め、流速を確保。
中回転域。1500rpm付近から上の小型ターボに並行するかたちで、下の大型ターボが運転を開始する。この時、下の大型ターボで圧縮された空気は上の小型ターボのコンプレッサー入口へ導かれ、二段圧縮が行なわれる。
高回転域。エンジン回転が2700rpmを超えた状態で高負荷が掛かると、エンジン後側に位置する第3のターボに繋がるバイパスが開かれ、運転を開始。これにより3基のターボすべてが同時に作動することになる。

■ N57S
シリンダー配列 直列6気筒
排気量 2993cc ディーゼル
内径×行程 84.0×90.0mm
圧縮比 16.0
最高出力 280kW/4000-4400rpm
最大トルク 740Nm/2000-3000rpm
給気方式 ターボチャージャー ×3
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 DI
VVT/VVL ×/×
(BMW X5 M50d)

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