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内燃機関超基礎講座

大別するとアプローチには2種類ある。ひとつは「独立ツインターボ」。6気筒エンジンなら1基のターボユニットで3気筒ずつを受け持つ。当然、1基あたりのタービン容量は小さくて済み、タービンホイールの径も小さく収まる。タービンの慣性モーメントはタービンホイール直径の5乗に反比例して向上するので、ターボラグが大幅に改善されるわけだ。

もうひとつが、ここでとりあげる2ステージ(シーケンシャル=逐次)・ツインターボ。容量の異なる2基のタービンを直列に配置。排気流量が少ない状態では小容量タービンを、流量が増えたら大容量タービンを作動させ、全負荷までに対応させる。ターボラグ対策として、一時期はその代名詞的存在だったが、最近はほとんど採用例がない。システムが複雑になり、特にターボラグ低減目的の場合、費用対効果の面でツインスクロールターボのほうが上と判断されるようになったためだろう。

逆に、下で紹介しているBMWのように、ディーゼルエンジンでの採用例が出てきたことは興味深い。その背景には、要求されるトルク範囲の拡大がある。必要とされる過給度が高まり、シングルターボでは十分な過給圧が確保できなくなってきたために……というわけだ。BMWのシステムは、現在最も完成度の高い順次型ツインターボであり、ダウンサイジングを目的としたガソリン過給エンジンへの応用も十分に期待できるところだ。

2ステージ過給システムは、BMWのディーゼル開発センターであるオーストリーのシュタイア社が開発を担当。まずは直6・3ℓエンジンとの組み合わせで市販された(N52)。その後、N47型直4ディーゼルにも同様のシステムが採用されている。(FIGURE:BMW)
2ステージ・ツインターボの作動概念図。中低速域では低圧用ターボで圧縮した空気を高圧用ターボで再圧縮し、過給圧を高める。3を超える圧力比とワイドレンジ化が目的。(PHOTO:BMW)
バリアブル・ツインターボのシステム構成。左から伸びているのはターボ下流の排気管。中央奥に水平に見えるエキマニから、中央に入って上下のタービンに導かれる。左上のアクチュエータで下側のタービンにつながるバイパスバルブを制御する。(PHOTO:BMW)
こちらは上側に位置する小容量ターボ。この写真ではタービンホイールの形状がよく確認できないが、コンプレッサーホイールはバックワードレイク型インペラーを採用している。(PHOTO:BMW)
下側に位置する大容量ターボ。タービンホイールはコンベンショナルな形状。反対側には相応に径の大きいコンプレッサーホイールが見えている。シャフト近傍の孔は冷却用オイルの流路。(PHOTO:BMW)
2代目と3代目のレガシィが採用していた2ステージ・ツインターボシステム。イラスト左手前側が車両進行方向だ。セカンダリーターボは奥側の右バンク後方に配されている。エンジン回転数が高まり、排気流量が増大すると制御バルブの作動によってセカンダリー側も過給を開始する。バンクごとに排気をまとめていたため排気干渉が起きていたが、現行4代目レガシィではレイアウトを変更。前側2気筒、後側2気筒を束ねて等長化し、ツインスクロールターボを採用している。(ILLUST:SUBARU)
エンジン左バンク後方に位置するプライマリー・ターボチャージャー。低中速域まではこちらがカバーする。排気経路は左右のバンクごとに束ね、制御バルブを介してターボチャージャーへ導かれる。バルブによる流路変更は吸気側でも行なっている。(ILLUST:SUBARU)

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