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「でんきの礎」は2008年に創設された制度で、電気学術・技術の発展史において重要な成果を挙げ、社会の発展に貢献し、歴史的に記念されるモノ・こと・人・場所が顕彰されている。
ステアリングシステムとは、自動車の「曲がる」機能を担うもので、マニュアルステアリング/油圧式パワーステアリング(HPS)/電動パワーステアリング(EPS)の3種類に分類される。このうちEPSは、1988年にジェイテクトと三菱電機が軽自動車(スズキ「セルボ」)に搭載し、これは世界で初めての実用化・量産化となった。
EPSは1988年の誕生以来、世界各国の自動車メーカーに広く採用され、安全、快適で環境に優しい自動車づくりに貢献し、今や世界中のドライバーにとって無くてはならない、当たり前の存在になっている。そして、現在に至るまでジェイテクトはEPSのリーディングサプライヤーであり続け、世界シェアNo.1※1、そして全種類のEPSを提供できるOnly Oneの存在である。
世界初のEPS誕生背景
1980年、日本の年間自動車生産台数は1,100万台を突破し、アメリカを抜いて世界1位となった。当時の日本で生産されていた自動車の多くはマニュアルステアリングを搭載した小型車であり、HPS搭載の小型車が普及し始めていた頃だった。
自動車の普及に伴い、女性や高齢者にユーザーの多い軽自動車の生産台数も伸びる中、女性や高齢者が運転しやすくなるよう、軽自動車へのパワーステアリング搭載に対するニーズが高まっていた。しかしながら、従来のHPSはエンジン始動中に常時油圧ポンプを回す必要があるため、軽自動車の小さなエンジンでは負荷が大きく、また搭載性にも課題があった。
対してEPSは、操舵時のみモーターを駆動させるのでHPSと比較してエネルギーロスが少ない上、油圧ポンプや配管も不要となる。そこでジェイテクトは、軽自動車には燃費と搭載性に優れるEPSが最適と考え、開発に着手した。
顧客への積極的な提案と改良を進め、1988年、ジェイテクトは三菱電機と共に、静粛な減速機、高トルクモーター、及び電磁クラッチを使用した信頼性の高い制御法を開発し、EPSを軽自動車に世界で初めて実用化した。
今後の展望
EPSは従来のHPSと比較して、燃費が改善することとCO2排出量削減による環境への効果などが認められたことから飛躍的に普及し、ジェイテクトのEPSは2015年4月にグローバル累計生産台数1億台※2を突破した。
今後は、小型車からSUVまでの多種多様なEPS製品群を開発・生産するだけでなく、従来HPSを採用していた大型車や高級車へのEPS搭載に向けた改良や、自動運転化・電動化社会に対応すべく、ドライバーとの協調を自由に制御できるステアバイワイヤの開発も進めていく。
※1:2020年 年間実績。ジェイテクト調べ
※2:EPS累計生産台数(自社調べ)に基づくジェイテクト試算値