内燃機関超基礎講座 | 直列3気筒エンジンの課題、不釣り合い偶力だけが残る性質

振動という面において比較的バランスが良いとされる4気筒から1気筒取り除いたかたちとなる3気筒だがその振動は意外にも御しやすい性質を持つ。日本では、すでに軽自動車等で豊富なノウハウが蓄積されている点もメリットのひとつだ。
TEXT:髙橋一平(TAKAHASHI Ippey)

 上のグラフは3気筒エンジンの往復運動部分に発生する慣性力を示す。クランクの回転に由来する1次成分と、コンロッドの傾きの変化に伴い発生する2次成分で構成されている(3次成分以降の小さな力は無視)。例えば、#1と表記する1番気筒に働く1次成分はクランク角0度の時に1、同角度の#2、#3はそれぞれ-0.5で、3気筒分の総和はゼロ。つまり完全に打ち消し合うことがわかる。これらの曲線は1次、2次ともに余弦(COS)で表され、2次の周期は1次の半分だが、やはり1次成分と同様に打ち消し合う。

 ただし、実際には#1、#2、#3はクランク軸方向にズレが存在するため、例えばクランク角0度の時#1が上向きの力、#2、#3に下向きの力が働いて、クランク両端を互い違いに上下させるような往復振動(偶力)が発生(これはクランク前後で気筒数とピン位置が対称の4気筒では発生しない)。この振動をフライホイールとプーリーのバランスウェイトで回転偶力に変換。さらにクランクと等速で逆回転するバランスシャフトを用い、回転偶力をキャンセルすれば1次は完全バランスとなり、4気筒並みもしくはそれ以下の振動レベルに抑えることができる。

 バランスシャフトを使わない場合は、バランスウェイトをさらに大きくして、振動方向を横長の楕円運動に変換。横方向に残る振動はマウントで吸収しやすい。3気筒の振動は意外に手懐けやすいのだ。

3つの代表的解決策

 エンジンが持つ振動のすべてを完全に消し去ることは現実的には困難。そこで抑え込みやすいかたちに制御する。3気筒にかかわらず振動対策を理解するうえで重要なポイントだ。

エンジンマウントの開発・改良

 振動に対する数値モデル化シミュレーション技術の高度化が進む近年、マウントの設計も容易になってきているというが、あらゆる振動がマウントで吸収できるわけではない。そこでバランスウェイトやバランスシャフトなどを用いることであらかじめ振動を制御しておく必要がある。液体を封入するものや、ラバー素材のみによるものなど、いくつかの種類はあるが、その目的は振動の減衰にある。

 イラストは、アウディの電磁コイル式アクティブマウント。オーディオ用スピーカーの内部構造に似たコイル+マグネットの構造を持たせ、コンピューター制御による加振で振動を減衰するというシステム。本来パッシブに振動を吸収するだけのエンジンマウントと異なりアクティブに振動を抑え込む。

バランスウェイトの設定

(FIGURE:NISSAN)

 3気筒ではピストンの上下運動から一次の往復偶力が残り、クランクシャフトの両端を交互に上下させる、揺さぶるような振動が発生する。クランク後端のフライホイールと前端のクランクプーリーにバランスウェイトを設けることで、この振動を回転偶力に変換することができる。打ち消すことは出来るが、バランスウェイトをさらに大きくすると横方向へ振動の方向が変換されることになる。

(ILLUST:VOLKSWAGEN)

バランスシャフトの設定

(ILLUST:VOLKSWAGEN)

 バランスウェイトの作用で往復偶力が回転偶力に変換されると、クランクシャフトと同速で反対方向に回転するバランスシャフトを設けることで振動を打ち消すことができる。また、エンジンマウントが吸収を得意とする横方向の振動に変換すると対策が容易になる。
 ちなみに上で示した日産の図は平面で振動を示したものだが、実際は揺さぶるような振動になる。

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