ルネサス: ゾーンECUの複数アプリケーションをセキュアに搭載できる車載ECU仮想化ソリューションプラットフォームを発表

車載ECU仮想化ソリューションプラットフォーム
ルネサスは、このたび、車載マイコンRH850/U2x用に仮想化ソリューションプラットフォームを発表した。

本プラットフォームは、1つのECU(電子制御ユニット)内で複数のアプリケーションをお互いに干渉しないよう安全かつ確実に分離して搭載できるようにするもの。これによりユーザは、E/Eアーキテクチャの進化に合わせてマイコンベースのゾーンアーキテクチャへ移行するにあたり、複数あったECUを1つのECUにまとめることが可能になる。本プラットフォームを採用することで、従来のソフトウェアを最大限に再利用しつつ、最小限の開発工数で車両の低消費電力化、ワイヤーハーネスの軽量化、設計難易度の低減を図ることができる。本プラットフォームは、5月末より提供開始予定。

本プラットフォームは、ルネサスの高性能な車載マイコンRH850/U2xと、ETAS社のハードウェア仮想化対応マイコン用ハイパーバイザ「RTA-HVR」を組み合わせたもの。RH850/U2x用に設定された組み込みソフトウェア、ツールおよびインタラクティブなデモ環境を提供するため、ユーザはゾーンECU開発において、さまざまな選択肢を試しながら開発を進めることができる。

ルネサスの車載デジタルマーケティング統括部のシニアダイレクタ、吉田哲志氏は、次のように述べた。
「ゾーンアーキテクチャへの移行は、セントラルECUと各ゾーンECUの機能の再配置を伴うため、設計の負荷が増加します。RH850/U2xのもたらす高性能に加え、この新しいECU仮想化ソリューションプラットフォームを使うことによって、お客様が安心かつ安全で高度なシステムを短期間で容易に開発できると確信しています」

ETAS社のVehicle Operating Systems担当Vice PresidentのNigel Tracey氏は、次のように述べた。
「ルネサスとの協業により、RH850/U2x の持つ高いハードウェア性能を活かし、クラスをリードするAUTOSAR OS技術を補完する、高性能でオーバーヘッドの少ない車載アプリケーション用組み込みハイパーバイザが実現出来ました」

RH850/U2B(CPU:最大400MHz x 8)とRH850/U2A(CPU:最大400MHz x 4)を含む車載マイコンRH850/U2xシリーズは、ASIL D対応の複数の車載ソフトウェアを搭載できる高い性能により、次世代のゾーンアーキテクチャをマイコンベースでコスト効率良く実現する。ソフトウェアの再開発を最小限に抑えつつ、ECUの部品点数を抑えることが可能である。さらに、ハードウェア仮想化支援機構、QoS(Quality of Service、RH850/U2Bのみ搭載)、高度なセキュリティ機能などを搭載しているほか、個々のアプリケーションのリアルタイム動作を保証する高性能NoC(Network on Chip)構造も有している。

ETAS社のハイパーバイザソフトウェア「RTA-HVR」は、RH850U2xのハードウェア仮想化支援機構と連携し、1つまたは複数の仮想マシン(VM)を構築する。VMは空間的(RH850U2xのメモリプロテクションユニットとガード機能を使用)にも時間的(RTA-HVR VMスケジューラを使用)にも互いに分離され、車載の厳しい機能安全やセキュリティ要件に対応する。RTA-HVRは、仮想デバイス拡張(Virtual Device Extension)を実現するためのツールキットも提供される。各VMは、1つまたは複数の仮想CPUコア、メモリ空間のサブセット、およびペリフェラル群から構成される。

RH850/U2x用ゾーンECUスタータキット

このソリューションの一環として、RH850/U2x用ゾーンECUスタータキットが用意された。本キットは、さまざまなVM構成(シングルコア、マルチコア、コアごとのマルチVM)をRTA-HVRを活用してすぐに試すことができる環境である。ゲストソフトウェアのイメージとして、ソフトウェアが何もない状態(ベアメタル)や、ETAS社のRTA-CAR Classic AUTOSARソリューションを搭載した状態など、さまざまな構成のVMが提供される。周辺機能の共有や仮想VM間ネットワーク(仮想CAN)などの例も提供される。

 ユーザは、PCで動作するアプリケーションツールにより、以下のVMの動作を確認することができる。

  • アプリケーションソフトウェアの実行時に故意にフォールトを発生させ、メモリ侵害やタイミングオーバの際のVMの挙動を確認する
  • RH850/U2xのノーウェイトOTA(Over the Air)機能を使って、他のVMが動作している間に1つのVMをアップデートする
  • 代替VMスイッチング・メカニズムによるパフォーマンスへの影響の確認する
  • ハードウェアQoS機能の影響を確認する

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