アンモニア(NH₃)は、炭素(C)を含まないことから、燃焼時にCO₂を排出しない燃料として、既存発電設備で利用することが可能。IHIで取り組んでいる、ガスタービンの燃焼器内に液体アンモニアを直接噴霧する燃焼方式は、貯蔵タンクからガスタービンまでの供給システムの簡素化や制御性向上など、社会実装に向けた利点を有している。
一方で、液体アンモニアは、天然ガスやアンモニアガスよりも燃焼性が低く燃えにくいため、アンモニア混焼率を高めた際、安定的なアンモニア燃焼と排気ガス中の温室効果ガスの排出抑制が課題となる。これまでは70%を超える高いアンモニア混焼率での運転時に、温室効果ガスの一種であり、CO₂の約300倍の温室効果を持つ亜酸化窒素(N₂O)が発生し、CO₂排出量を削減できても温室効果ガス削減にはつながらないことが課題となっていた。
今般、IHI横浜事業所の2,000kW級ガスタービンに、新たに開発した燃焼器を搭載して試験を実施した結果、70~100%の高いアンモニア混焼率でも温室効果ガス削減率99%以上を達成し、液体アンモニアのみの燃焼で2,000kWの発電ができることが実証された。今後の開発では、さらにNOxを削減していくとともに運用性の向上や、長時間の耐久性評価を行い、2025年の液体アンモニア100%燃焼ガスタービン実用化に向けた取り組みを進められる。
温室効果ガス削減率:
化石資源など炭化水素燃料のみを燃焼した際の温室効果ガス排出量を100%として、アンモニア燃焼により削減された温室効果ガス排出量の比率と定義。炭化水素燃料をアンモニアで置き換えればCO₂排出量は削減できるが、燃焼時にN₂Oが発生すると温室効果ガス削減につながらない場合がある。本研究開発では温室効果ガスとしてCO₂とN₂Oが考慮されている。