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「ATメカニズムの最新基礎」
現在、 乗用車用としてもっとも広く普及しているのがオートマチックトランスミッション(ステップAT)です。 ステップATが登場した当初は、 パワートレーンとしてエンジンの高効率エリアを狙いながら運転する方式が主流でした。 そこから、 “燃費向上要求”に応えるために、 遊星歯車の積み増し(多段化)によるレシカバの拡大、 伝達効率の向上、 軽量化など、 内燃機関の進化に呼応するかたちでオートマチックトランスミッションも技術進化を遂げてきました。
そんななかモーターの登場がこれらのあり方に変化をもたらそうとしています。 主役はギヤからモーターへ。 潮目が変わろうとしているパワートレーンに対して、 ステップATの構造や役割はどのように変わっていくのでしょうか? あらためてステップATの最新基礎の理解を深めるとともに、 電動化時代のステップATのあり方について事例をもとに探っています。
Chapter 1 メカニズム
ステップATとは、 段階的(ステップ)にギヤ比を切り替えていくAT、 いわゆる自動有段変速機を指します。 エンジンの出力をコンバーターで受け止め、 遊星歯車(プラネタリーギヤ)の選択組み合わせで変速する……。 ステップATの構造は加速する電動化を背景に少しずつ変化しつつありますが、 まずは理解の軸足とすべく基本的な構造である、 発進機構(トルクコンバーター/モーター)、 変速機構(遊星歯車/シフト)、 減速差動機構(デファレンシャルギヤ)、 油圧制御機構(バルブボディ/フルード)のそれぞれの役割と目的を、 あらためて書き下ろした熊谷俊直氏の図解イラストをもとにわかりやすく解説しています。 これを見ればステップATの遊星歯車が頭の中で回るようになります!
京都大学名誉教授・久保愛三博士に訊く「電動化時代の歯車」
発進デバイスのトルクコンバーターの変わりに電気モーターが組み込まれる。 ステップATの大きな変革がまさにいま起ころうとしています。 そこで浮かび上がってくるひとつの疑問が「ステップATに電気モーターが入ってくると、 歯車の設計は変わるのか?」という点です。 そこで本誌連載「歯車屋の見た世界」に執筆いただいている、 日本の歯車研究の第一人者である、 久保愛三博士に上記の質問を投げてみました。
Chapter 2 最新事例
パワートレーンの高効率化が進み、 さらに今後、 電動化が強く推し進められていこうとしていくなか、 ステップATはどうなっていくのでしょうか? 最新事例としてPSAのDS7クロスバックなどに搭載された「アイシン・1モーターハイブリッド」、 PHEVに軸足を置いて設計され、 2023年に搭載開始が予定されている「ZF・8HP Gen.4」、 北米市場で展開中のFWD用世界初となる「ホンダ10速AT」、 そして、 いまなお6速で頑張る「マツダ SKYACTIV-DRIVE 6AT」などそれぞれに特徴のある各社のユニットについて、 エンジニアに設計の工夫を伺いました。
Chapter3 ATを支えるものづくり
ステップATの内部は歯車と摩擦クラッチと油圧機構が大半を占めます。 質量のある回転体だけに工作精度はエンジンと同等以上であり、 もっとも精巧な自動車用ユニットです。 そのステップATの製造を担う現場、 トルクコンバーターとトランスミッションケースの工場を取材しました。
タイトル:モーターファン・イラストレーテッド
vol.179 「よくわかるAT」
発売日:2021年8月12日(木)
定価1,760円 (本体価格1,600円)
ISBN:978-4-7796-4437-5