オーストリア郵便(Austrian Post)が運用する2台のeスプリンターのフロントモジュールには、粒子状物質の排出を抑えるための微粒子フィルターが内蔵されている。8月に郵便用車両として導入されて以来、eスプリンターは毎日オーストリア・グラーツ市内を走行し、現在では、合計6,400km以上の配達ルートを走破しているという。これを踏まえて、メルセデスベンツの商用車部門は、オーストリア郵便およびフィルターサプライヤーであるMANN+HUMMEL社とともに、共同で開発したフィルター技術をテクノロジープラットフォーム「SUSTAINEER」に初めて導入し、実際の業務において試験運用を行っている。試験運用の成果は、2023年半ばに実用化が期待されている。
今や、大気の質は都市の生活の質を左右する大きな要因になってきている。とりわけCO₂排出量と微小粒子は、人々や環境、気候に悪影響を及ぼしている。これを受けて、メルセデス・ベンツ日本、オーストリア郵便、MANN+HUMMELは、微粒子汚染を低減し、実際の運用における効果、天候の影響、耐久性を総合的に理解することを目的に、8月にパイロットプロジェクトを開始したことを発表した。オーストリア郵便の運用するeスプリンターのフロントモジュールに統合型微粒子フィルターが装備されたのはこのためである。試験運用の開始以来、2台のeSprinterはグラーツ市の中心部を走り回って業務を行い、2台のeSprinterは1週間ごとに交代で運行し、搭載された微粒子センサーによって微粒子濃度の代表値を測定している。
3か月の試験運用の成果
業務を行うeスプリンターは、カルスドルフの郵便物流センターからグラーツ市の中心部までを往復し、1日平均60kmを走行している。2台のeSprinterはそれぞれ平均160個の小包を配達し、業務中は100回弱の停車を行っている。ろ過フィルターのスペシャリストであるMANN+HUMMELによるフィルターの検査と検証の結果、フィルターの損傷や変形は確認されなかった。パイロットプロジェクト開始以来、eSprinterは約60日間使用され、優秀に機能したろ過フィルターは、約6,400ミリグラムのほこりをろ過したという。
このことから、わずか数週間の試験運用でオーストリア都市部の配送状況でにおいては、フィルターの使用が推奨されるレベルにあるということが分かった。微粒子は発生源の近く、つまり市街地の濃度レベルが最も高い場所でフィルターにかけられている。フィルターの耐久性は圧力損失測定で確認され、15%の負荷条件が決定された。今のところ、運用に制限はなく、さらなる知見を得るため、パイロットプロジェクトは2023年半ばまで実施される予定となっている。また、このパイロットプロジェクトでは、フィルターの耐久性に加えて、車両への影響も分析される。