ターボの数え方:シングル/ツイン/トリプルにシーケンシャル……ターボチャージャーの種類と仕組み

エンジン
ILLUSTRATION:BMW
ターボの構造と載せ方でいろいろ変わる呼び方を整理してみた。
ILLUSTRATION:熊谷敏直(KUMAGAI Toshinao)

 ターボチャージャーに関する名称を考えるときは、種類と配置に分けるのがわかりやすい。装置単体の構造(種類)と、装置がどのような数でどんなふうに備わっているか(配置)という区分けである。

【種類】
→ ハウジング形状
 ■ シングルスクロール式
 ■ ツインスクロール式
→ 流体導入方法
 ■ 固定式
 ■ 可変容量式
→ 駆動方法
 ■ 排気タービン式(ターボチャージャー)
 ■ 機械駆動式(スーパーチャージャー)
 ■ 電気駆動式(電動コンプレッサー)
 ■ 電気補助式(電動ターボチャージャー)

【配置】
→ ひとつ:シングル
→ ふたつ:(別流路)ツイン/(同流路)シーケンシャル、2ステージ
→ みっつ:トリプル
→ よっつ:クワドラプル、クワッド
……

【種類:ハウジング形状】ツインスクロール式ターボチャージャー

 何が「ツイン」かというと、タービンハウジング内の流路。4気筒エンジンにおいて、排気バルブが同時に開かない1番4番マニフォールドと2番3番マニフォールドを別流路にすることで、管内を流れる排ガスが干渉しないようにし、タービンホイールを回転させるエネルギーをロスなく得ることを企図した構造にしている。ご想像のとおり、コスト面では不利。それに対して通常のタービンハウジングを持つターボチャージャーは、区別する際にシングルスクロールと称されるようになった。

【種類:流体導入方式】可変容量式ターボチャージャー

排ガス流量少:ノズル絞りの状態

 ターボチャージャーがタービンホイールを排ガスのエネルギーで回転させる構造なことから、低回転時などの排ガス流量が少ないときには十分な回転エネルギーを得ることが難しい。そこで排ガス出口に可変式ノズルを設けて流速を高め、回転エネルギーを得る仕組み。ホースの先をつぶすと水が遠くまで飛ぶ、あの理屈である。可変容量(Variable Geometry/Variable Nozzle)ターボと称する製品が多い。なお、コンプレッサー側に可変ベーンが備わるものはVariable Diffuserと称する。

 ディーゼルエンジンでは非常に採用が多くなった。いっぽうでガソリンエンジンでは少数。その理由が排ガス温度。ガソリンエンジンはディーゼルに対して排ガス温度が高く、それに耐えられる機械構成と素材とすると高価になってしまう。

 かつてホンダは可変ベーンではなくタービンハウジング内をふたつの流路に分けフラップで「片方/両方」を使い分けるシステム:バリアブルフローターボを採用していた。ツインスクロール式の一種とも言えるだろう。

 これらに対して可変容量式ではない通常のものは固定ジオメトリ式などと呼ばれる。

【配置:ツインターボ】

 単純にふたつのターボチャージャーを別流路で用いるタイプ。画像では直列6気筒の前後で3気筒ずつ、V型エンジンでは両バンクそれぞれにターボを備えればツインターボになる。

ツインターボの応用、クワドラプルの例。W16型エンジンのブガッティは片バンクに2基のターボを備える。都合4基である。(ILLUSTRATION:BUGATTI)

【配置:シーケンシャルターボ/2ステージターボ】

 ふたつのターボチャージャーを組み合わせて同一流路で用いるタイプ。ねらいはターボラグの解消と高過給の両立。高過給をねらって大径タービンとすると立ち上がりに劣りターボラグに見舞われてしまう。かといって応答性を重視して小径タービンでは高過給が望めない。そこで大小ふたつのターボチャージャーを備えて走行シーンによって両者を使い分け、あるいは交互に用いて過給効率を追求するのがシーケンシャル/2ステージターボと呼ばれる方式である。

シーケンシャルターボ、トリプルの例。N57S型。(PHOTO:BMW)
シーケンシャルターボ、クワドラプルの例。B57型。下側小径ターボの奥にもうひとつ、小径ターボを備えている。果たしてどのようなフローにしているのだろうか。(PHOTO:BMW)

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