アウディ、電動モビリティ「アクティブスフィア・コンセプト」を発表。クワトロ四輪駆動システムを備えピックアップに変化するラグジュアリークーペ

アウディ「アクティブスフィア・コンセプト」
アウディは、sphere(スフィア)コンセプトカーの集大成となる4番目のモデル、Audi activesphere concept(アウディ アクティブスフィア コンセプト)を発表した。スイッチを押すだけでオープンカーゴベッド(アクティブバック)に形状が変化。これにより、電動自転車、ウォータースポーツ、そしてウィンタースポーツ用ギアなどのレクリエーション装備を積載することができるようになっている。

美しく統合されたエクステリア

アクティブスフィア・コンセプトのボディサイズは、4.98m×2.07m×1.60m(全長×全幅×全高)、電気自動車らしくホイールベースは2.97mと大きく、後席足元には広いスペースが確保されている。非常にエレガントなこのクルマは、単なるラグジュアリースポーツカーではなく、印象的な最低地上高とオフロードにおける優れた走破性を実現する22インチの大径ホイールを備えている。スポーツバックとしてデザインされたアクティブスフィアのリアは、決して小さくないボディだが、前後オーバーハングが短いことで数値以上にコンパクトに見える。さらに、ボディ・ボンネット・ウィンドウがシームレスに繋がっているためか、1つの塊から削りだしたような収まりの良さを感じさせる。足回りには、22インチの大径ホイールに、オフロードにも対応するトレッドパターンを備えた 285/55タイヤを装着している。さらには驚くなかれ、ホイールには走行環境に合わせて開閉するシステムが組み込まれている。オンロード走行時には空気抵抗を最適化するためにホイールは閉じ、オフロード走行時には冷却性能を高めるためにホイールが開くようになっている。

そして、このアクティブスフィア・コンセプトの常識を超えた機能が、リアボディの可変アーキテクチャだ。クルマの使用用途によってボディ形状を変形させることが可能になっている。「スポーツバック」モードでは、エレガントでスポーティなシルエットを犠牲にすることなく使用することができるが、「アクティブバック」モードでは、ガラスウィンドウがルーフ側にスライド。同時にリアエンドがピックアップトラックのゲートのように90°手前に展開し、積載量を増加させることができるようになっている。また、アクティブスフィア・コンセプトの基本となる地上高は208mmだが、オンロード走行時には40mm低く、オフロード走行時には40mm高く、車高を調整することができる。

ドライバーを主役に迎えるインテリア

インテリアは、水平方向に広がるコントラストカラーが印象的な空間になっている。シート面とドア、フロントパネルは温かみのあるラバレッドカラーで統一され、ダークカラーのエクステリアと見事なコントラストを成している。4座のセパレートシートは、高い位置にある長いセンターコンソールを延長したようにシームレスに配置されている。センターコンソールと平行に設置されたシートシェル内側の上端は、アームレストとして機能。シート座面、背もたれ、ショルダー部分は、3つの別個のラウンドシェルとしてデザインされている。

アクティブスフィア・コンセプトが自動運転モードで走行しているときは、ダッシュボード、ステアリングホイール、ペダル類は見えない位置に格納される。特にフロントシートでは、ドライバーの前に、フロントエンドまで広がる開放的なスペースが出現する。クリアな視界を確保するために、ひとつのフレームの中に完全な1枚のガラスが採用されているので、クリアな前方視界が確保されている。ドライバーが自ら運転する場合は、ダッシュボードとステアリングホイールがフロントウィンドウ下から展開する。さらに、ドアに設置されたMMIタッチレスコントロールを介することで、ウィンドウの開閉やシートの調整などを、手に留まらず目で操作することができる。

新しい車載システムの中心となるのが、複合現実ヘッドセットだ。ユーザーが拡張現実(AR)に対応したヘッドセットを装着することで、前方の視界空間にバーチャルコンテンツを表示させることができるようになった。優れた光学精度、解像度に特化したコンテンツには、リアルタイムに変化するスピードメーターなどの計器類や、クライメートコントロールの操作スイッチなど、様々なユーザインタフェースが表示される。これによって、目線を前方から逸らすことなく、車内システムを存分に操作することができるようになっている。

新世代を先駆けるプラットフォーム

アクティブスフィア・コンセプトは、アウディ・ポルシェで共同開発された EV用プラットフォーム「PPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)」をベースに構成されている。PPEは、現在も開発が進められており、2023年末までにPPEをベースとした最初の市販モデルがアウディより発表される、と公式で予告されている。PPEは電気自動車専用に設計されているが、幅広いモデルに対応させることが可能で、背の高いSUVに限らず、A6シリーズのような低車高ラインナップにも活かすことができる。

PPEの重要な要素は、前後のアクスル間に搭載されたバッテリーモジュールだ。アクティブスフィア・コンセプトでは、約100kWhのエネルギー容量が備えられている。前後アクスル間の車幅全体を有効に活用することで、比較的フラットなバッテリーレイアウトが実現されている。さらに、将来すべてのPPEモデルの駆動テクノロジーの中心的要素となるのが、800Vの充電テクノロジーだ。これにより「e-tron GT クアトロ」のバッテリー同様、急速充電ステーションを使用すれば最大270kWの出力で非常に短い時間でバッテリーを充電することができる。バッテリーの5~80%充電は、なんと25分未満。一充電走行距離が600kmをはるかに超えるアクティブスフィア・コンセプトは、長距離ツアラーとしての資質を十分に備えている。

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