最初に思い当たるのは、排ガス浄化システムの合理化だ。排ガス浄化システムは、エキゾーストポートからなるべく近い場所に置きたい。V型エンジンの場合、外側に排気系があると、それぞれのバンクに浄化システムがひとつずつ必要になり、レイアウトもコストも厳しくなる。ホットインサイドならば、左右バンクの排気をすぐに合流させられるから、排ガス浄化装置は1系統で済む。F33A-FTVも、Vバンク内にある2基のターボの出口で排気を合流させ、直下に酸化触媒を置いている。
もうひとつは、シーケンシャルツインターボを採用したかったこと。低回転域ではターボをひとつだけを稼働させることでトルク応答を高め、中負荷域以上ではふたつのターボを稼働させることで、高トルクが得られるシステムだ。
特にオフロード4WDのMT仕様の場合、発進に使用する低回転トルクが重要になる。走行抵抗の大きい悪路では、発進トルクが細いと、クラッチ操作が非常にシビアになるからだ。
ところが過給ディーゼルは、発進トルクが細いのが弱点。過給圧が高まる前のディーゼルエンジンは、無過給ガソリンエンジンの7割くらいしかトルクが出ない。だからランドクルーザーも、200系のターボディーゼル仕様(豪州向け)は排気量を4461ccと大きめに取ることで、この領域をカバーしていた。
しかし過給ディーゼル最大のうまみは、高過給して大胆なダウンサイジングができること。過給化で上昇したコストと質量をシリンダー数の削減で回収してこそ、真のダウンサイジングなのだ。
しかし排気量を下げれば、過給圧が上がるまでのトルクが心許ない。それを解決する手段が、シーケンシャルターボだ。ふたつのターボをシーケンシャルに(リレーして)使うには、ひとつのターボに全気筒分の排ガスを集める必要があるから、排気系はバンクの外より内側にあったほうが圧倒的にレイアウトしやすい。
V6だと一般にバンク角は60度になるが、ツインターボが入るように90度まで広げれば、従来型V8の1VD-FTVと同じ工作機械が使えて投資が抑えられるし、クランクピンのオーバーラップが増えてボアピッチも詰められる。V6ディーゼルのホットインサイドは、意外と良いことが多いのだ。
しかし、温度の高い排気系をバンクの内側に入れれば、熱がこもりやすくなる理屈で、そこになにがしかのデメリットもあるのでは?と思って取扱説明書を見れば、新型ランクルのF33A-FTV型搭載車は、市街地走行以外はアフターアイドルが必須となっていた。しかも、高速道路の80km/h巡行の後でも約20秒のアフターアイドルが必要とのこと。80km/h巡行といえば、エンジン負荷は小さいし、走行風は潤沢に入ってくるから、冷却はそう厳しくないはずなのだが、それでも約20秒、100km/h巡航後なら約1分のアフターアイドルが必要となっている。
こうなるのは物理的に仕方がないとはいえ、自動化できなかったのは残念だ。同じ80km/h巡航といえども、外気温が変わればターボまわりの冷却状態も変わるだろうし、停止前の勾配によっても差があるはず。現在は潤滑油温度や冷却水温に加え、走行履歴も把握できるのだから、適切な秒数だけ自動的にアフターアイドルが働くようにするのは、それほど難しいことではないはずだ。
なぜそうしなかったのかについては「新型ランドクルーザーのすべて」の取材時に聞いてみようと思う。