ネオジム磁石に希土類が必要なのはなぜか——電気自動車はお熱いのがお嫌い?

(PHOTO:Honda)
駆動用モーターとして主流のPM同期式は、その名のとおりPermanent Magnet:永久磁石を用いる。その磁石には、磁力と耐久性のバランスからネオジム磁石が採用されているが、その周辺でよく耳にする「希土類」という単語。これらは何のために配合されているのだろうか。

ネオジム磁石はすっかり一般的になった感がある。これを正しく言い表してみれば希土類磁石の一種であり、Nd2Fe14B(ネオジム/鉄/ボロン)で示される組織粉末を焼結によって成形する磁石である。1982年に佐川眞人氏らによって開発された、わが国の誇る技術のひとつである。2023年現在では、実用化されている希土類磁石のなかで残留磁束密度/保磁力の視点から最強を誇るが、一方で耐熱性に劣るというのが弱点。具体的には約315℃に達する(=キュリー点)と不可逆的な減磁を生じてしまう。

駆動用モーターとしては315℃の温度に達しないように冷却に努めるわけだが、耐熱性を高めるためにジスプロシウムやテルビウムを加えるという手段が編み出された。一般的に、ネオジム磁石は60%が鉄/30%がネオジムという組成だが、ここにジスプロシウムを数%加えると、1%添加につき熱減磁を15℃改善することができるという(Wikipedia:ネオジム磁石より)。テルビウムはジスプロシウムよりも保磁力向上に優れる性質を持つものの、ジスプロシウムよりさらに希少な金属であり、よってその役目はジスプロシウムが担うことが多い。

しかしジスプロシウムもレアメタルであることは確か。これらを使わないで耐熱性と保磁力の両立を図れないか。これらに取り組むのがホンダやトヨタの例である。ともに「焼結構造だと粒径が大きく性能に限界がある」ことに着目、ならば極微細な構造とすれば耐熱性や保磁力を高められるではないか、という取り組みである。

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