プロテリアルが高性能フェライト磁石を適用したモーターの性能を実機で確認

プロテリアルは高性能フェライト磁石 NMF-15 ※1 を適用したモーター(以下、フェライト磁石モーター)を最適化設計することで、ネオジム磁石を使用した xEV ※2 の駆動モーター(以下、ネオジム磁石モーター)と同等レベルの出力が得られることをシミュレーションで確認し2022年12月に公表していたが、今回シミュレーション結果に基づいてフェライト磁石モーターの実機が試作・評価された結果、今後主流になっていくことが予想されるBEVやPHEVに適用可能な、100kWを超える出力が得られることが確認された。

開発背景

脱炭素社会実現のため、自動車生産台数に占めるxEVの比率は今後ますます高まることが見込まれている。これに伴いxEVの駆動モーターや発電機に使用されるネオジム磁石の生産量拡大が見込まれる。一方で、ネオジム磁石はレアアースのうち軽希土類に分類されるネオジムのほか、特に資源量が限られる重希土類のジスプロシウムやテルビウムなどが使用されることから、需要の拡大にともない資源リスクが高まることが懸念されている。 こうした中、プロテリアル グローバル技術革新センター(GRIT)では、xEV用駆動モーターにフェライト磁石が適用できることをシミュレーションで確認し、2022年12月9日に公表した。この発表に対する国内外からの反響は非常に大きく、実機での検証を望む声が寄せられていた。

高性能フェライト磁石搭載モーターの概要

プロテリアルでは、この度当社高性能フェライト磁石(NMF-15)を用いたモーターを試作して性能評価が行われた。このモーターは、xEV駆動用のネオジム磁石モーターを比較基準としたシミュレーション結果(表参照)に基づいて設計・製作したローター(写真)を適用したものである。性能試験を実施したところ、シミュレーション結果よりわずかに劣るものの、これから主流になっていくことが予想されるBEVやPHEVの駆動モーターに適用可能な、100kWを超える出力が得られることが確認された。

今後、シミュレーション結果と実機試験結果の差異を検証し、さらなるモーター性能向上の可能性が検討される。フェライト磁石はネオジム磁石よりも電気抵抗が高いことから、モーター高速回転時の渦電流損失抑制にも寄与する。資源リスクの軽減やコストの抑制といった顧客の課題を解決するため、今回の実機試験の結果を示しながら、これまでネオジム磁石が採用されてきた各種用途における代替品の選択肢の一つとしてフェライト磁石の活用を提案し、顧客の課題解決に貢献していく。


※ローター・ステーター径は固定, 運転温度や高速回転時の強度確保などを考慮して設計

※1 量産フェライト磁石としては世界最高レベルの磁気特性(2023年6月現在、プロテリアル調べ)を発現する独自の材料。
※2 電気自動車(BEV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)の総称。
※3 比較対象としたモーターでのシミュレーション結果であり、全てのモーターで同様の結果になるとは限らない。

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