JFEスチール、自車位置認識センサー搭載の大型キャリアパレット車による鋼材自動搬送の基本開発を完了

JFEスチールとJFE物流およびNICHIJOの3社は、西日本製鉄所(倉敷地区)の構内にて自車位置認識センサー等を搭載した大型特殊車両(キャリアパレット車)による鋼材自動搬送に関する基本機能の開発を完了し、本年から実証実験を開始したことを発表した。

JFEスチールは、将来的なドライバーの労働力不足や労働環境改善を目的として、2018年より鋼材搬送の自動化技術について研究開発を進めている。製鉄所構内における鋼材の搬送には、パレットと呼ばれる台車が使用されており、パレットには薄板コイルなどの鋼材を多数個積載することが可能で、キャリアパレット車はこのパレットを背負うような形で搬送する大型特殊車両である。トレーラーが一度に搬送できる貨物量が20トン程度であるのに対し、キャリアパレット車では最大160トンと効率的な搬送が可能であり、各工程間の輸送から出荷まで工場内の物流において重要な役割を担っている。

今回開発されている自動搬送は、GNSS※1の衛星情報とLiDAR※2などのセンサーにより自車の位置認識を行ない、予め設定したルートを自律的に無人走行するものである。キャリアパレット車は、パレットの下に潜り込むようにして積載するため、一般的なトレーラーよりも広い330センチの車幅をパレット脚部とのわずか10cm程度の隙間に安全に自走する必要がある。さらに、100トンを超える貨物の重量によりタイヤ外周の変化が生じると、移動距離の計算にも影響を及ぼしてしまう。こうした特有の課題に対し、自動搬送システムにおける自車位置認識の精度を高度化することで、スムーズな積載と走行が実現されている。

既にキャリアパレット車での設定ルートに沿った直進・右左折・停止、パレット積載・搬送といった基本的な機能に関する連続自動動作(図2)の技術開発が完了し、本年1月から構内の実環境ルートの一部にて、不特定多数のパレットを用いた実証実験が行われている。本実証実験は、製品出荷における自動化と生産性向上を目指して取り組まれており、本年9月より走行速度アップなどの性能向上に段階を進め、本年度内の実験完了が予定されている。今後、この実証実験により、自動搬送車両が走行するルートの周辺環境の安全装置についても実装に向けた運用設計を行い、自動搬送車両を稼働できる環境整備が推進される。将来的には、当技術を活用した自動搬送ルートの拡大が計画されている。

※1 GNSS:
Global Navigation Satellite System(衛星測位システム)の略称。複数の測位衛星から受信した電波をもとに、衛星との距離を割り出すことで、現在位置を計測するシステム。

※2 LiDAR:
Light Detection And Ranging(光による検知と測距)の略称。レーザ光を常時照射し、対象物が反射した光をもとに、対象物までの距離や位置を計測するシステム。

【図1】キャリアパレット車とパレット
【図2】キャリアパレット車の連続動作

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