1万6000個の高精細LEDアダプティブライト。小糸製作所(KOITO)による夜間視界の良好化技術【ジャパンモビリティショー2023】

ジャパンモビリティショー(旧:東京モーターショー)で、小糸製作所は、「高精細ADB(Adaptive Driving Beam)」をはじめ、ドライバーに最適な夜間視界を提供するライティング技術などを多く出展した。その見どころをお伝えしよう。
TEXT & PHOTO:伊藤治彦(ITO Haruhiko)

次世代モビリティ社会の安全・安心に向けて、「ドライバーサポート」「センシングサポート」「コミュニケーションサポート」の3つの軸に沿った技術開発を行っている小糸製作所(KOITO)。今回の出展もそれらに沿った内容で、初公開の技術を多数紹介している。

高精細アダプティブドライビングビームを初公開

前方車両に対する遮光を局所的に行えると同時に、歩行者や標識に対しては減光し、眩しさや反射光のぎらつきを抑える高精細ADB。

まずは、「ドライバーサポート」の領域から、「高精細ADB(Adaptive Driving Beam)」が初公開された。ハイビームの照射範囲を1万6000個に分割して、照射をより緻密にコントロールする技術だ。細分化された1万6000個のLEDの点灯・消灯に加えて、出力光度も制御。従来は12個分割などだからその差は著しい。

歩行者など照射範囲のごく一部だけをコントロールできる、この優れた技術。これまでADB搭載車を実際に走らせていても、必要な箇所にしっかり照射ができなくて歩行者の発見が遅れたり、逆に歩行者や対向車に眩しい思いをさせたりとその制御は、満足のいくものでなかった。それを飛躍的に改善するのが、今回のライトシステムのポイントだ。

従来のアダプティブライトでは周りまで遮光となり、遮光範囲に歩行者が入って発見が遅れる。逆に、歩行者に眩しさを与えてしまうことも。
新たな高精細アダプティブライト。局所的に遮光し、照射できる範囲の最大化が図れるため、視界を十分に確保できる。歩行者に対して眩しさの低減も可能だ。

また、歩行者に対して眩しさを緩和。道路標識に対しても局所的な減光を行い、ほかの交通参加者や車載カメラの認識にも配慮している。消灯する範囲を極小化することで、明るく照らす範囲を最大化できるという面があり、夜間の交通事故ゼロを目指している。

1万6000個のLEDを緻密制御する基盤。わずか数センチ。

路面上に光のパターンを表示して自車の動きをアピール

前方車両に対する遮光を局所的に行えると同時に、歩行者や標識に対しては減光し、眩しさや反射光のぎらつきを抑える高精細ADB。

「コミュニケーションサポート」の領域は、人とクルマのつながりを密にするライティング技術群だ。「標識灯路面描画ランプ」は、ターンランプやバックアップランプから路面上に光のパターンを表示することで、自車の動きを周囲の人やクルマに知らせるもの。交差点や駐車場などで威力を発揮し、歩行者の巻き込みや出会い頭の事故防止に貢献する。

ドライバー異常やドア開放時の後続車への警告機能などを、標識灯を部分的に点消灯する光の演出で実現する「アニメーションランプ」も新しい。

写真のターンランプは、見通しの悪い交差点などで、歩行者に右左折を光のパターンでアピール。

高度な周囲監視を実現するセンサー技術

「センシングサポート」の領域は、レーザーを使って車両周囲360°の対象物までの距離・方向といった位置情報を計測して、正確に検知するセンサー技術群だ。今回の出展では、同社が投入予定の車載用「LiDAR」のラインアップ拡充を公開。先進運転支援システム(ADAS)や自動運転に必要不可欠なセンサーだが、クルマのほか、産機・建機・農機車両などといったさまざまなニーズに応える短距離・中距離・長距離のラインアップを紹介している。

3つの領域で紹介をおこなっている今回の出展。初公開が目白押しで、移動体検知システムや、二輪車用ADBも展示している。二輪車用のアダプティブライトは、コーナーで車体を傾けた際などイン側の照射が下がってしまうのを解決。部分的にハイビームで照射するようにして、ライダーにとって、より遠方まで見渡せる照射を実現。しかも、前走車への眩しさを防止をおこなう二輪車初のADBを開発した。

次世代ライティングシステムなどで、安全・安心・快適なモビリティ社会の実現を目指す。

同社の新たな「光」の可能性。交通事故低減や渋滞解消など交通社会の課題解決を目指している。安全運転にとって光がいかに大切であるかを再認識できるので、この機会に訪れてみたいブースだ。場所は、西展示棟4階(西3・4ホール)だ。

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