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多燃料に対応したエンジンの基本構体を構築
日野自動車は、内燃機関を搭載した車両におけるマルチパスウェイの効率的な実現のために、「燃費向上」と「燃料の多様化」の 2つを推進している。内燃機関は改良により、省エネルギー化と低エミッション化、燃料においても低エミッション燃料や水素を使用することで、カーボンニュートラル燃料を含む多様な燃料への対応が目指されている。「燃費向上」においては、エンジン自体の高効率化と低フリクション化(摩擦化)による燃費改善と、排出ガスを限りなくゼロに近づける”ニアZero”への挑戦が目指されている。
「燃料の多様化」においては、様々な燃料に対応した内燃機関のプラットフォーム構想が掲げられている。燃料によってエンジンの構造を大きく変えるわけではなく、化石燃料用エンジンの共通基本構体をベースに、部品を改良させることで多種の燃料に対応させている。”液体カーボンニュートラル燃料”用エンジンでは高圧ポンプ、インジェクタなどの燃料噴射系を一部改良。”気体カーボンニュートラル燃料”用エンジンでは、燃焼系・点火系・燃料噴射系を広く改良させることで気体状の燃料に対応。”水素燃料”用エンジンでは、先述の3つに加えてセンサ系も改良することで、精度を増している、といった具合だ。これによりコストを抑えながら、統一エンジン母体で多様な燃料に対応させることができる。
RE機構ベース構成により多様な電動車の構築が可能に
さらに、物流用車両で注目されるのが電動車(EV)だ。日野自動車は電動車においても、多様なモデルに対応したプラットフォーム構想を掲げている。それが、電動車の航続距離の拡張を目的とした「レンジエクステンダー RE-BEVプラットフォーム」だ。このプラットフォームはモーター駆動を主とした構成となっているが、様々なエネルギーを電気に変えて電池に充電する「RE機構」が搭載されている。これをベースにすることで、様々なエネルギーに対応した車両を構成することができる。RE機構を燃料電池(FC)や水素タンク、内燃機関(ICE)、発電機などに置き換えることで、BEVに限らず燃料電池車(FCEV)やプラグインハイブリッド(PHEV)にも対応させることができる。
幅広い用途に対応する長時間稼働と、使いやすい搭載バッテリーの汎用性
航続距離の拡張を目指したレンジエクステンダーだが、商用車での幅広い用途をカバーする安心装備も実装される。長距離を走る物流車両で心配になるのが、バッテリー容量の制限による立ち往生、所謂”電欠”の不安だ。これを改良するために、充電後の電動走行の航続距離いっぱいまで走行しても、先述のRE機構が様々な燃料を電気に変えて走行に活用することで、全体的な航続距離とトータルコストを向上させている。このシステムにより、マルチパワーソースによる長時間稼働と給電が実現され、災害発生時などでも運用事業を継続させることができる。
さらに、目的地までの道路状況を予測させることで高効率なEV走行が実現される。例えば、EV走行中にバッテリー残量が少なくなってきたが交通渋滞によって次の充電ステーションまで持たない、といった場合でも、車両が道路状況を予測してRE機構で車両バッテリーを走行しながら発電させることでEV走行の航続距離を拡張させるなど、賢いエネルギー運用ができるようになっている。これにより、これまでのディーゼル車両やハイブリッド車両を大幅に下回るCO₂排出量の削減が見込まれている(日野調べ、同社の運行データより)。
RE-BEVプラットフォーム構想における搭載電池パックは、様々な用途・車型の必要エネルギーにより標準化されているため、バッテリーセルの技術進化を制約することなく、普遍的な構造で汎用性を維持することができる。トレーラー、バス、小型・中型トラックなど、クルマの車格に合わせて電池の搭載個数を変更するなどして、設計を変えることなく普遍的に使いやすいモジュール構想となっている。
外寸 [mm] | L1500×W700×H300 |
想定電圧 [V] | 350 |
想定容量 [kWh] | 70 |
車両I/F | 標準化 |
電池制御 | セル進化に応じて変更 |
備考 | 水冷式/急速充電対応 |