RH850/U2Bは、RH850ファミリの中で最もハイエンドとなるマイコンであり、高い性能、スケーラビリティ、仮想化対応、セキュリティ機能など、優れた特長を有している。パワートレイン制御やxEVのインバータ制御など、複数のECU(電子制御ユニット)を統合し進化する、次世代の車両のE/E(電気/電子)アーキテクチャの要となるゾーン/ドメインコントロール、コネクテッドゲートウェイなどに最適である。
ルネサスは、ボディ&シャシー制御システム向けのRH850/U2Aに、新製品RH850/U2Bを加え、クロスドメインマイコンのポートフォリオを拡充した。これらのマイコンとルネサスの車載用セントラルゲートウェイ向けSoC(System on Chip)R-Car S4を組み合わせることにより、次世代のE/Eアーキテクチャに対応したスケーラブルなソリューションを提供する。
ルネサスの車載デジタルマーケティング統括部、統括部長の吉田直樹氏は次のように述べている。
「自動車システムの設計が今後、ドメイン型からゾーン型のE/Eアーキテクチャに進化するに伴い、この次世代の革新的なアーキテクチャを実現するための車載用半導体が求められています。ルネサスのRH850/U2Bは、これらの自動車システムに要求される厳しいコスト、安全性、セキュリティ要件などに応えると同時に、高性能を実現しました。これにより、パワートレインやHEV/EV、新しいゾーンおよびドメイン制御アプリケーションの実現に向けて、お客様をサポートします」
RH850/U2Bは、ルネサスのパワートレイン向けRH850/ExシリーズおよびHEV/EVモータ制御向けRH850/Cxシリーズの主要機能をベースに、さらなる高性能化と高機能化が図られた。RH850/U2A同様、ハードウェアベースの仮想化支援機能を搭載したことにより、機能安全レベルASIL Dまでの複数のソフトウェアを相互干渉することなく独立して動作させることができる。仮想化によるオーバーヘッドを削減し、リアルタイム性も確保できるため、ボディ、シャシーからパワートレインまで、複数のECU機能を1つのECUに統合することができる。
QoS(Quality of Service)機能では、すべてのバスマスタに対して遅延監視と規制機能を提供し、常に最小限の帯域を確保することができる。OTA(Over the Air)ソフトウェアアップデートでは、デュアルバンクの内蔵フラッシュメモリにより、ECUが動作中でも一方のメモリにアップデートデータを保存することができる。アップデート後に不具合が発生しても元のデータに戻して動作させることができるため、安全で迅速なノーウェイトのOTAを実現できる。
さらに、RH850/U2Bには、モータ制御専用アクセラレータIP(EMU3S)を搭載した。GTM v4.1やTSG3などの複数の専用モータ制御タイマと連動することにより、高速回転を実現しながらCPUの負荷を大幅に低減する。専用のデータフロープロセッサ(DFP)アクセラレータIPも搭載し、複雑な制御を行う際のCPUの演算負荷を軽減する。
RH850/U2Bの主な特長は次の通り。
- 400MHz のCPUを8個(うち4個はロックステップアーキテクチャ)搭載し、ASIL-DおよびASIL-Bアプリケーションをターゲットとしたフラッシュ内蔵車載用マイコンとして最高レベルの性能を実現
- ECC(楕円曲線暗号)を含むEvita Fullに対応したセキュリティ機能を搭載し、サイバ攻撃への対策を強化
- GTM v4.1やTSG3などのモータ専用タイマと連動する新たな高性能モータ制御IP (EMU3S)を搭載
- モータの回転角度を検出する位置センサであるレゾルバや誘導型位置センサからのアナログ信号を処理するレゾルバ/デジタルコンバータIP(RDC3X)を搭載
- NSITEXE,Inc社製、ベクトル演算器搭載のRISC-VベースのDFP(データフロープロセッサ、DR1000C)搭載により、複雑なアルゴリズムの高負荷演算処理を高速実行可能
- ギガビットイーサネットTSNスイッチなど最新の通信インタフェースを搭載
- 複数インスタンスのAES128ロックステップモジュールにより、コンフリクトフリーで決定論的かつ、安全でセキュアな通信を実現