IHI:CO2の再資源化によるオレフィン製造技術の開発に向けたNEDO委託事業に採択

IHIは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/CO2を原料とした直接合成反応による低級オレフィン(*1)製造技術の研究開発」の委託先に採択された。

 本研究は、石油を用いずに低級オレフィンを製造するプロセスの基礎確立および既設の低級オレフィン製造プラントとの統合検討を目的として、2025年2月まで実施する。

 経済産業省が、関係省庁と連携し策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、カーボンニュートラル実現に向けたキーテクノロジーとして、大気に排出されている二酸化炭素(CO2)を資源としてとらえ、これを分離・回収し,有効利用するカーボンリサイクル技術を活用する方針が示されている。

 従来,低級オレフィンは原油由来のナフサ(2)を熱分解することで製造されているが、IHIは、排ガスや大気から回収したCO2と水素を、反応器と触媒によって合成する技術の確立を目指している。これは現在排出されているCO2を有効利用するカーボンリサイクル技術であり、プラスチック製造時などに排出されるCO2を低減することが可能。これまでにIHIは、シンガポール科学技術庁(ASTAR)傘下の化学工学研究所(ICES)(*3)との共同研究により触媒の開発を行い、良好な効率でオレフィン製造ができることをラボ試験で確認済み。

 本研究では、これまでに開発した触媒をベースにさらに高性能な触媒の開発、および石油化学用リアクターの反応器設計技術を生かし、反応時の発熱を制御し、効率的かつ安定的にオレフィンを製造できる反応器を開発する。さらに、石油化学プラント敷地内に、CO2回収装置と低級オレフィン製造装置を設置し、実際の排ガスから回収したCO2とプラント内の副生水素を用いた製造試験を2024年度から実施する計画。試験で得られた低級オレフィンと、既設プラントで製造された低級オレフィンとの比較・互換性評価などを行い、既設プラントとの統合条件を検討する。

 IHIは、これまでのメタネーション触媒・反応器やCO2回収装置の開発実績、プラントのプロセス設計技術を生かし、化学工業分野でのカーボンニュートラルの実現への貢献を目指し、本研究を推進していく。

【研究開発項目】
1. 低級オレフィン合成触媒および反応器の開発
2. 既存ナフサクラッカーの実排ガスを用いた試験および既存設備との統合検討

【事業期間】
2021年度~2025年度

(*1) 低級オレフィン:多くの主要基礎化学品の原料となるエチレン,プロピレン,ブテンなどのことを示す。 プラスチックや樹脂の原材料として用いられる。
(*2) ナフサ:原油の蒸留によって得られる低沸点成分。 溶剤や石油化学製品の原料として利用される。
(*3) ICES:Institute of Chemical and Engineering Sciences:触媒,バイオ,有機・高分子など幅広い分野の科学や化学工学に関する研究開発を行う研究機関。

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