トヨタがヨーロッパ市場にて、アベンシス/RAV4/レクサスISなどに搭載していたディーゼルエンジン・2AD-FHV。豊田自動織機と共同で開発され、2005年にデビューした。同系のエンジンに、2.0ℓの1AD-FTV型(90kW/300Nm)、同じ2.2ℓながら110kW/310Nmの2AD-FTV型がある。2008年10月のパリサロンにて発表された3代目アベンシスに搭載された仕様で、200MPaのデンソー製ピエゾ式コモンレールシステムを採用した。
2代目のアベンシスですでに、180MPaのピエゾ式インジェクターを採用。2.2ℓクラスでのピエゾ式の搭載は、当時、初めてだった。ソレノイド式に比して2倍の応答速度を持つピエゾ式は、5回/サイクルの噴射回数、最短噴射インターバルに至っては0.1msを達成した。3代目アベンシスで200MPaのコモンレールシステムを搭載。9回/サイクルもの噴射回数でEuro5をクリア、さらなる環境性能を実現している。
2ADは、オールアルミ製のディーゼルエンジン。アルミシリンダーはガソリンエンジンのAZ系(2.0ℓ/2.4ℓ)を適合させ、鋳鉄のシリンダーライナーを使用する。この構造は、2001年の「ヤリス(ヴィッツ)」において、1.5ℓのガソリンエンジンブロックを1.4ℓのディーゼルエンジンのベースとした“世界初のオールアルミディーゼルエンジン”の技術が惜しみなく導入された。
シリンダー間にも水路を設け、ライナーの冷却強化に努めている。また、ピストン側では2mmの低張力リングを使用することで、摩擦損失も低減した。2005年の時点で世界最高レベルの15.8という低圧縮比を実現している。
VNT(Variable Nozzle Turbo=可変ノズルターボチャージャー)は、排ガスの排出速度に応じてモーターでベーンの角度を制御し、過給効率の最大化を図る。通常はステップモーターが使用されるが、2AD-FHVでは正確さを期して直流モーターを採用した。必要に応じて低速域で可変ベーンを稼働することもできる。これにより、2.0ℓのディーゼルターボに対してタービンホイールのイナーシャを30%低下、低速域における過給のレスポンス向上を図る。
D-CAT(Diesel Clean Advanced Technology)は、2003年11月に発表された後処理技術。NOxとPMを“同時に”処理するDPNRと酸化触媒に、EGRを組み合わせたシステムである。DPNRは、Diesel Particulate NOx Reductionの略で、一平方インチあたり300セルの多孔質セラミックフィルタをエキゾーストマニホールド近傍にセット、その下流に酸化触媒を配する。また、DPNRの最適化のためには排ガスのA/Fを調整する必要から、エキマニに“5本目”のインジェクターを装備。リッチスパイクを発生させ、NOxを吸蔵還元する。
■ 2AD-FHV エンジンタイプ:直列4気筒ディーゼルDOHC16V+VGターボ 総排気量(cc):2231 圧縮比:15.8 ボア×ストローク(mm):86.0×96.0 最高出力(kW[ps]/rpm):130 [177] /3600 最大トルク(Nm/rpm):400/2000-2600 シリンダーヘッド材質:アルミ合金 シリンダーロック材質:アルミ合金 燃料供給装置:デンソー製ピエゾ式コモンレール200MPa 過給機:VTG(可変タービンジオメトリー)ターボ CO2 (g/km):157@セダン/159@ワゴン エミッション・コントロール 後処理:Euro5 トヨタ「D-CAT」+酸化触媒 変速機:6MT 搭載車種:アベンシス(欧州仕様)