東レ:全熱交換エレメント向け高性能熱交換シートを開発

東レは、伝熱性・透湿性・ガス遮蔽性に優れ、かつ、耐水性・抗ウイルス性を備える高性能熱交換シートを開発した。本開発品を全熱交換換気システムのエレメントに適用することで、省エネルギーでより快適、かつ衛生的な換気が期待できる。

 全熱交換換気システムは、屋外からの給気と室内からの排気との間で温度(顕熱)と湿度(潜熱)の交換を行い、換気時における室内温湿度変化を抑制することで、空調負荷の低減と居室内の快適性向上を図る省エネ換気システム。温度と湿度の交換は、システムに内在するエレメントの内部で熱交換シートを介して行うため、熱交換シートには温湿度を伝達するための伝熱性と透湿性が重要。加えて、排気に含まれる二酸化炭素や臭気が給気に混入するのを防ぐため、それを遮断するガス遮蔽性が必要となる。
 しかしながら、従来、熱交換シートには、薄膜紙を使用するのが一般的であり、多孔質材料の紙ではガスを完全に遮蔽することが難しく、また、長期の使用でエレメントに溜まった汚れを洗浄除去できないという問題があった。

熱交換シートの伝熱、湿度透過、ガス遮蔽イメージ

 これに対して東レは、独自の薄膜多孔質フィルムに湿度のみを透過する機能性樹脂層を積層した新たな熱交換シートを創出した。本シートは従来の紙製熱交換シートの約1/5の厚みで伝熱性に長け、約1.2倍の高透湿性を有しながら、20倍以上のガス遮蔽性があり、その性能は水や中性洗剤での洗浄後も変わることがない。本シートを全熱交換システムのエレメントに適用することで、全熱交換効率1)80%以上、有効換気量率2)99%以上を達成でき、洗浄後もその性能を維持することができる。(JIS B8628に則した東レ社内評価、測定風量150m3/hr)。
 また、東レの熱交換シートは、抗菌性(JISZ2801:2010)、防カビ性(JISZ2911:2018)、ウイルスバリア性(ASTM F1671)の試験で高い性能が実証されている。

図3.熱交換シートの断面図

 東レは、現在、世界的な新型コロナウイルスの感染対策強化を背景に、需要が拡大している全熱交換換気システム用エレメント向けに、2022年から本格販売開始を目指す。

1)全熱交換効率:温度(顕熱)と湿度(潜熱)を合わせた空気中の全熱量の交換効率。
2)有効換気量率:屋外から室内に供給される給気に含まれる、外気(新鮮な空気)の含有率。

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