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乗りやすさと高回転でのパンチを両立!
今回紹介するのは、実力派チューナーとして名を馳せたフジイダイナミクスのBNR34だ。故・藤井代表が生前に手がけたストリートスペックの真髄、とくとご覧あれ。(OPTION誌2004年3月号より抜粋)
RB26DETTの良さを活かした名チューナーの遺作
ヘッドや腰下にまで手を加えれば、1000psオーバーも可能なのがRB26の大きな魅力。しかし、それはストック状態でも600psに耐えられる基本性能の高さがあるからこそと言っていい。
フジイダイナミクスが作り上げたBNR34は、そんな素のRB26が持つ性能を余すところなく引き出したチューンドだ。
エンジンは腰下完全ノーマルのまま、ヘッドにHKSステップ1カムを組み込んだだけというライトな仕様。それでも常用600psで一切トラブルが発生しないというから、RB26の基本設計の高さが伺える。最高出力は実測で590ps。ブースト圧は抑え目の1.4キロでこのパワーだ。
タービンはTO4Rを選択。エンジン回転の上昇と共にブースト圧が高まる、リニアなパワーフィールが身上のシングルターボ/ウエストゲート仕様だ。パワーバンドが4000rpm以上のため、中速トルクに若干の物足りなさを感じるが、8000rpmまで衰えないパワー感はポン付けタービンでは味わえないもの。
ブローバイガスは斜めにセットされた一つ目のタンクでまずエアとオイルに分離される。その後オイルパンへ戻されるという設計。いずれもワンオフ品だ。
RB26の弱点であるクランクプーリーは、ATI製に交換するのが定番。ところが、プーリー比が大きく変わるため、ウォーターポンプやオルタネーターの作動効率が極端に下がってしまう。そこでオーバーヒートや充電不足を解消するオリジナルのプーリーキットを開発し、組み込んでいる。
ミッションはホリンジャーの6速シーケンシャル。街乗りでの扱いにくさは一切無い上に、1000ps級のマシンにも対応という耐久性の高さも魅力だ。600ps程度のクルマで使う場合は、定期的なミッションオイル交換さえ行っていれば全く問題は出ないという。
クラッチには、ATSのカーボントリプルプレートクラッチを使用している。
サスペンションはダンパーに別体式タンクを備えたオーリンズ車高調でセットアップ。この足はダンパーロッド先端のダイヤルで伸縮両方向の全体的な減衰力を調整、タンクに付いたダイヤルで縮み側の減衰力だけを調整できるシロモノだ。
ストリートでは20段調整のほぼ中間で使用。硬めにセットすれば、Sタイヤを用いたサーキットアタックにも十分対応できる。
ブレーキは、キャリパー、ローター共にアルコン製。フロントは6ポットに355mm、リヤは4ポットに315mmという組み合わせだ。ワイドトレッドスペーサーは、トヨタ車用オフセットのホイールを装着するために作ったワンオフ品でフロントが25mm、リヤが35mmだ。
ホイールはBBSのDTM。フロント9.2Jに対してリヤ10.2Jと、GT-Rでは珍しい前後で異なる幅だ。ただし、タイヤ外径まで変えてしまうとトランスファーに大きな負担がかかってトラブルを引き起こすため、フロント245/40、リヤ275/35サイズのタイヤを組み合わせて外径を揃えている。
室内は、シートこそレカロSP-GNに交換されているが、エアコンやオーディオなどは全て残した完全なる街乗り仕様となる。
スピードメーターとタコメーターの間には、ミッションオイルやトランスファーオイルの温度をデジタル用事するDFRマルチテンプメーターがセットされる。
高速域でダウンフォースを生み出すリヤアンダーディフューザーは、垂直板が純正よりもサイズが大きいニスモのカーボン製に交換される。マフラーはアペックス製でメインパイプ95φ、テール115φだ。
リヤトランクには、アルミ削り出しのワンオフステーを介してARCのウイングをセット。いわゆるドラッグウイングと呼ばれる形状だが、ありきたりなトランクパネル直付けタイプでないところが拘りだ。
RB26DETTという名機のキャラクター性を尊重しつつ、どんなシチュエーションでもトップを狙える戦闘力が与えられた美しいBNR34。内に秘めたパワーを隠すシンプルな外衣まで含め、まさに大人の改造車だ。