「初代NSXの直4エンジン仕様が刺激的すぎる!」インテRのVTECをターボ化して換装!?

まさかのK20改ターボ仕様で425馬力を発揮!

完全オリジナルのカーボンエアロも注目

小さな頃からクルマが好きで、とにかく本を読み漁り、メカニズムやエンジニアリングについて独学で学んだというアミール・ベンタトゥ。カリフォルニアでも有数のユーロ系チューナーで働くかたわら、自らE36型M3や930型ポルシェ911Sを製作し、趣味としてタイムアタックに挑んできた。

そんなアミールが現在最も力を入れているのが、日本が生んだ稀代のスーパースポーツ、1991年式のNA1型NSXだ。

「NSXはデザインも空力も優れたプラットフォームですが、難点は重たくてパワーが無いことです。であれば重量を増やさずにパワーを上げる方法はないかと考え、思い付いたのが直列4気筒のK20をターボにして搭載するというアイディアでした」。

本来はV6エンジンをミッドシップに積むNSXに、FF用として展開されている直4を搭載する。ちょっと考えただけでも、何から何まで作らないと辻褄が合わないことは容易に想像できただろう。

だが、アミールは各分野のスペシャリスト達から協力を得ながら、困難なKスワップに着手した。カスタムメイドのマウントやドライブシャフト、エンジンハーネスなどを手に入れ、時には仲間と作業をともにして独創的アイディアを具現化していった。

チョイスしたのは、DC5型インテグラの北米仕様(アキュラRSXタイプS)に与えられた、K20Z1。これを、イノベーティブマウント製のカスタムマウントを使用し、エンジン左右と後方の3点で支持。後方には支えがないためカスタムプレートを溶接している。

エンジン本体はサンディエゴの“スポーツカー・モーション”で組まれ、オープンデッキのネガを払拭するスリーブ加工も実施。そこにカリフォルニアの“プロトマシン”がEFR7163をボトムマウントする独創的な吸排気レイアウトを構築し、コーヨーラドのインタークーラーも直近にマウントされる。燃料系はバイオ燃料のE85も使用できるフレックスフューエル対応だ。

当初ミッションは純正5速を組み合わせていたが、ターボパワーに対する耐久性を考慮してサムソナスの6速シーケンシャルドグを投入。

アミールいわく、現状は未完成とのことだが、K20への載せ替え作業は完了し、すでにタイムアタックとテスト走行を何度となく繰り返している。実際のところC30A型の3.0L V6とK20ターボのどっちが速いのか聞いてみたら、即座に「K!」と答えてくれた。

ホイールはフロントが9.0J×17+15、リヤが10.5J×18+22のボルクレーシングTE37で、アドバンA052を組み合わせる。ロングボルトとショートナットの組み合わせがアメリカの定番だ。

ドライブシャフトはインセインシャフトによるカスタムメイド。取材時はノーマルだったブレーキも、現在はストップテックのトロフィーキットに交換済み。車高調にはKWのクラブスポーツコイルオーバーを使用する。

エクステリアメイクも独特だ。GTウイング、フロントスプリッター、スプリッターエンドプレートなどは、アミール自身がデザインし、カーボンで製作したRS Futureのオリジナルパーツ。

フロントバンパーはI’s Impact、フェンダーはヨコタボディクラフト、サイドスカートはマルガヒルズ、ボンネットはセイボンと、日米のパーツをミックスした。塗装色はお馴染みミッドナイトパープル2。

一方、クスコのロールケージが組まれた室内には、ブリッドのプロフェイスとジーグIIIを装備。K20Z1の制御にはホンダータのKProを使用するが、シャーシ関係の動作にはNSXの純正ECUを使用している。ライワイヤのカスタムハーネスも大いに役立った。

ステアリングコラムにAIMのデジタルダッシュを備え、ブーストや油温などの情報も一覧表示。もちろんシフトリンケージもイチから製作しているが、アミールにとって盟友であるバトルクラフトのクリスチャン・ウォンが一肌脱いでくれた。

「K20は国内外の実績を見ても800〜900psまで耐えうる十分な信頼性があります。C型にはそこまでの信頼性はありません。個人的にK20は現役の直4の中でベストなエンジンだと思います。今はグローバル・タイム・アタック・シリーズのストリートクラスに参戦していますが、バトンウィローのターゲットタイムが1分46秒台。現状のレコードである48秒台を更新するのが目標です」。

そう語るアミールは、最近RS Futureという自身のショップを開業。CADを駆使したオリジナルのカーボン製エアロパーツも製作している。いよいよクルマ作りとタイムアタックを本業とし、多忙な毎日を送っているわけだ。この稀有な4気筒ターボ仕様のNSXがどこまで高みに近づけるのか、非常に楽しみだ。

Photo:Akio HIRANO TEXT:Hideo KOBAYASHI

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